お正月の深夜のテレビ放送の映画を見る。というのが私のお正月スタイルのひとつです。
そんなこんなで2024年のお正月、深夜にやっていたスパイダーマン。
テレビでは初代3部作とアメイジングシリーズの2つを連夜やっていて、私は過去に初代の第一作は何回も観ていたので、飛ばし。初代の2からアメイジングシリーズまでを録画して観ました。
でもスパイダーマンの映画は、マーベル版シリーズもあります。それも観ないとスパイダーマンは語れない?ということでマーベル版は追加でプライムで視聴。
一番最初は、サム・ライミ監督のスパイダーマン3部作ですね。トビーマグワイア主演。
初出は2004年。
次にアンドリューガーフィールドが主演したアメイジングスパイダーマン。2012年からの2部作。エマストーンも出ています。マーク・ウェブ監督。
で一番新しいのがマーベル(MCU)が製作したスパイダーマン ホームカミングをはじめとする3部作。トムホランドがピーターパーカー(スパイダーマンの少年)役で2017年公開。
21年に公開された「ノーウェイホーム」は、アマゾンプライムでまだ有料なので見ていません。400円を出すか出さないか迷ったあげく。
これを延々と見続けたのは、スパイダーマン通になりたかったわけでは全然ないのですが、これだけシリーズ化するってやっぱり魅力があるってことで、その魅力を知りたいと思った次第です。
でも正直、テレビで正月やった2シリーズはすでに過去に全部観ていたことに観てから気づき。
それを全然覚えていないってことは、そんなに印象なかったんだろうとは思うんですが、改めてマーベル作品もふくめ通して観てみて、いや魅力があるのは分かりました。
ただし、、まあ当たり前っちゃ当たり前ですが
「スパイダーマンが敵と戦って勝つ」
という大筋はどれも共通しております。
特に悪役との戦いシーンは、自分がアクションにそもそも興味がないから寝ちゃったりもしてしまいました。戦いシーンが終わったらすっと目が覚めるという「うまいことできている自分」にわれながら感心しつつ。
そう。
そもそも私はアクション映画、好きじゃないんです。
じゃあダメじゃん(;´∀`)
でもでもです。
だからといって「しょうもな!」とは全く思わなかったんですね。
むしろ面白かったです。
ということでアクション映画が好きじゃない私による
ここがいいよスパイダーマン
をお送りしたいと思います。
一部ネタバレあり。
1.いけてない主人公ピーターパーカーの成長物語
いろいろ映画化もされているアメコミ作品を全然知らないんですが、確かスーパーマンのクラークケントも性格優しめの冴えない新聞記者かなんかだった気がするので、「主人公が弱め」というのはアメコミ界の王道なのかもしれないですね。
スパイダーマンであるピーターは10代なので、学校のヒエラルキーの最下層だったり、一部の生徒からからかいを受けていたり、もちろんケンカも弱いし、女子にももてないし、でも頭は良くて成績はいい「理系ガリ勉」みたいな感じです。
これは基本どのシリーズも共通です。だってそこがやっぱり魅力だと思うんですよ。
スパイダーマンも、要は少年誌で展開されているような少年の成長物語なんです。コミックを読む読者層が自分事としてとらえることができる設定ですよね。
特にマーベルの描くスパイダーマンシリーズは、コメディの要素が強く、ダメなピーターパーカーが等身大に人間くさく、実に面白いです。深夜放送のテレビ放映って基本吹き替えなので、吹き替え版で観てたんですが、吹き替えの翻訳家のセンスもありますよね、きっと。めっちゃセリフ展開が面白いです。
トビー、アンドリュー、トムと歴代ピーターを演じる役者さんはそろって小柄でなんとなく雰囲気は似てて(でも顔立ちとか体つきは全然違う)、だけどマーベル版のピーターであるトムホランドは3人のなかでは一番特徴のない顔立ちというか、パッと印象に残らない感じです。でもだからこそ余計に、ピーターの地味な冴えないキャラに合っているのかもと。
※もちろんトムホランドは全然イケメンですよ。そら。そういう役作りに合っているという意味。
とにかくスパイダーマンの何が魅力かって、それはもうスパイダーマンである高校生ピーターパーカーそのものだと思うので、シリーズの3人ともにその後も活躍されているポテンシャルの高いいい俳優さんだし、ピーターのキャラがあってこその少年から大人への成長だったり、「ヒーローとは強さより心が大事」っていう部分にもつながっていくので、そこに共感や魅力を感じないと、全然面白くないんではないかと思います。
2.スパイダーマン=蜘蛛男だからこその活躍
これも「そらそうだろう」と言われたらそれまでですが、スパイダーマンはなんでスパイダーマンになったかというと、実験にされていた特殊な蜘蛛にかまれたりしてスパイダーマンになります。これはうろ覚えですが?3シリーズともに共通だったと思います(むしろはっきり覚えてないってどういうこと)。
だからスパイダーマンの並外れた身体能力の基本は、蜘蛛と同じように壁をつたうことができたり、蜘蛛の糸を出したりできることなんですよね。蜘蛛の糸はピーターが自分で化学薬品で作ってた気もするけど。化学に強いピーターが、蜘蛛の特色を採り入れることで、NYのビルの谷間を飛び回ったり、高いビルを這い上がったりという、スパイダーマンならではの、スパイダーマンだからこその動きを実現しています。
でもね、ビルの谷間を糸を出して飛び回るのはよいとして、スパイダーマンが全身タイツで壁を登っていく姿、かっこいいのでしょうか?
そう。私は逆にそこがスパイダーマンの魅力だと思うのです。
だって、蜘蛛ってそもそも「かっこいい昆虫」でもないし、どっちかというと気味悪く思われたりもします。
それを人間と融合させるって発想そのものがすばらしくないですか?
カフカの小説「変身」から着想を得ている「ザ・フライ」とか有名ですが、要はあの路線というか。
だからなんていうのか、そもそも「かっこよくないもの」をね、取り入れてるんですよね。冴えないピーターといい蜘蛛といい。
かっこいい虫、たとえばクワガタとかカブトムシとか、そういう人気昆虫ではないんです。バッタからきてる仮面ライダーとも、そこが違う。
身近な昆虫としてハエでもよかったけど、そうするとさきほどの「ザ・フライ」のホラーになってしまうので、「蜘蛛」ってすごいバランス感覚に優れた発想だと思うんです。アイデア勝負のアメリカっぽいですよね。
で、その「実際かっこいいか~?」というスパイダーマンが活躍して「キャー♪スパイディー♪」と女子から黄色い声援を受けたり、子どもからあこがれの存在に見られてヒーローになっていくっていうのが、シンプルに面白いと思いました。
3.映画内の女子の扱いの変遷から時代を読み取れる
これは上野千鶴子氏を心の師とあおぐ私だからっていうのだとは思うので、おまけ的な要素です。
サムライミ版はまだ2000年代初頭だからか、登場する女子がキャーキャー要員です。
ヒロイン役のピーターのガールフレンド、MJ役のキルスティン・ダンストもキャーキャー言っています。あとキルスティン版はなんか、妙に色気があります。
トビーマグワイアのピーターも3シリーズの中ではいちばんシリアスというか、影があるので、他シリーズに比べてアダルトな雰囲気があるんですよね。そのなかで、まだまだ女子は「ただ助けられる存在」の域を脱していません。
で、マークウェブのアメイジングシリーズでは、ヒロインのエマストーンにこのキャーキャー要素が一切なくなります。それだけではなく、エマストーンは、「助けられる存在」を超えた「活躍さえする存在」になっています。でも、私は2の結末がどうにも好きじゃないので、マイナス1。
なんにしろアメイジングシリーズ初出は2012年なので前シリーズ最後作公開の2007年からの5年間のあいだに「世の中のジェンダー感覚・常識」が変わったのをスパイダーマンの変遷で見て取れるのが、面白いです。
そして最新のマーベル版では、ヒロインに限らず、登場する人物の人種の壁がぐっと低くなって多様性豊かなメンツになっています。ヒロインも有色人種で、2作目のファーフロムホームの主役のトムホランドとヒロインのゼンデイヤはプライベートでもカップルなんですって。
ゼンデイヤは黒人と白人のミックスで、歌手としても知られる存在。美人さんで、トムより長身ですが、とっても仲が良いようです。
ジョンワッツ監督によるマーベル版は、そういう「今どき」全開だし、他のシリーズと違って大きくコメディに振り切っているので、私としても一番笑っておもしろく観れました。そしてハリウッドはいつも、しっかり時代を牽引しているなあと感心します。
ほかにも「CG頑張りました」から、映像美への挑戦に変わりゆく映像技術の変遷だったり、敵役のキャラデザインの凝り具合が作品ごとに差がありすぎな気がしたり、マーベルだからってアイアンマンとか出す必要そんなになくない?とか、悪役の悲哀がジョーカーの悲哀と同じだなぁと感心したり、いろいろ思ったんですが、どのシリーズもそれぞれテーマが違っているし、どれもそれぞれの魅力があって面白いです。
そして、上に挙げた、というか原作から連綿とぶれずに続く「ピーターは基本冴えない」「蜘蛛がヒーローだよ」という、この2つを絶対的な根源としていることで、スパイダーマンをシリーズを超えて優れたエンタメとして成立させていると私は思います。
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