テレビ東京で(大阪ではテレビ大阪)深夜にやっていた年末の映画が、ゴールデンタイムのロードショーとは全然毛色が違うことは、世間的にはどれだけ認知されているのでしょうか。
私には分かりませんが、テレビ東京がやる年末年始の深夜映画って、映画がジブリかディズニーアニメ、もしくはグレムリンやホームアローンだけじゃなく、めちゃくちゃ奥が深いことが分かる絶好のチャンスなんですよ。
テレビに局側の、特に民放のいろんな勝手な規制ぽいもの、忖度ぽいものがあることもどこまで認知されているか分かりませんが、深夜の枠は少し緩めで、かつテレビ東京のメジャー局のゴールデンタイムに対する反骨精神みたいなものに、私は素直にリスペクトを贈りたいです。
というのも、この2023年に向かう年末年始にテレビ東京が「バイス」、続いて「スポットライト 世紀のスクープ」を放映したからなんですが。
て言ってもこれらの作品は、別に知る人ぞ知る名作とか、新進気鋭の監督による問題作だとかでは全然なくて、アカデミー賞ノミネート&受賞している超有名作品で、なぜにこれらを「ゴールデンタイム」に流さないのかの方が、私的には不可思議なんですが。
2018アメリカ
2015アメリカ
以前書いた感想。
どちらもプライムで無料じゃなかった残念(つД`)ノ
でもでも。視聴率の問題?つっても話題性は十分あるわけですよ。賞的にも出てる俳優的にも。
まあそういうのもある上で、さらにテレビ東京の深夜放送が「バイス」ときて「スポットライト」を連続で流すことが粋な計らいであるんです。
観た人なら分かるんですが、どちらも、アメリカの汚点ともいう史実をテーマにしている作品という共通点があります。
しかもこの順番が大事で、「バイス」は、ブッシュ政権の当時、アメリカ史上最強で最凶と言われる副大統領ディックチェイニーを描いた物語で、2001年の911同時多発テロからの核兵器虚偽によるイラク侵攻に至るまでの政府の内幕を描いています。
で、「スポットライト」はちょうど同じ時期に起こったカトリック司祭の性的虐待事件を暴くボストン・グローブ社のジャーナリストたちを描いています。
どちらもtrue story がベースなんですね。
しかも権力側の不正や犯罪を描いているわけです。前者は権力側の視点。後者はそれを暴くジャーナリストの視点という違いがまた面白いのです。
とはいえ、どちらもアカデミー賞に乗っかるメジャー作品。
「バイス」は、アダムマッケイが監督、主演がクリスチャンベールで、製作にブラットピットが名前を連ねているというまんま表街道。ゴールデングローブ受賞作。
「スポットライト」はアカデミー2部門受賞。私のお気に入りマークラファロに、マイケルキートンが主演で渋い!
まあそういう全米的に評価がめちゃくちゃ高い作品。だけど深夜放送。
深夜放送にこういう粋があるテレビ東京はやっぱりテレビ東京なんだなぁと、よく分からないけど、一目置いてしまいます。
さて、そんな年末年始に盛り上がる深夜映画ですが、そんなこと言いつつ全部観た!とかではなくて、正直私が観たのは、「バイス」と「世界から猫が消えたなら」2つだけ。。(BSのない我が家)
他にもこのお休みに観たのありますが、全部Amazonプライムビデオの無料作品です。
までも、普段よりいろいろ観れたから、せっかくだし、良かったランキングをしたいと思います。
前置き長!
私的年末年始に観た映画ベスト4(22〜23年)
4位「バイス」
ゆーて4位ですが、クリスチャンベイルのビジュアルの寄せ具合が神すぎてやっぱりすごいんですよ。
で、同じくアダムマッケイ監督、ブラピ製作の「マネーショート」もなんですが。
アメリカの事情や社会を知らないとアダムマッケイ作品はなかなか難しいっていう。
私は特にリーマンショックの舞台裏を描いたマネーショートに至っては、金融に無知無関心ぶりを発揮して途中で寝落ちしました…ごめんなさいブラピ。(でも頑張って観ました)
でも「バイス」は全然まだ分かりやすくて、しかもコメディ。だから80年から2000年代の当時のアメリカの政治事情をぼんやりとでも知識あればめちゃくちゃ面白いはず。
そうでない私みたいなアメリカの大統領はレーガン、クリントン、ブッシュ親子でしょ、くらいしか知らな〜い(´∀`=)という人には、事前に
映画評論家である町山さん番組の記事を読むのがおすすめ!
これ読んだら映画内容もすごくよく分かるし、楽しめます。
3位「老後の資金がありません!」
2021日本
だって嫁の天海祐希さんと姑の草笛光子さんが「私ね、昔宝塚入ろうと思ってたの」「私も」「あなたには無理」とかいう会話してるんです。
いやガチヅカやん。ていう楽しい突っ込みが入れれます。
草笛光子さんは宝塚ではなくSKDの方の歌劇団出身みたいですね。
面白いし、楽しいし、なんかさすがというか。天海祐希さんのコメディエンヌぷりの安定。草笛光子さんのじじい変装の「まさか」展開。
とにかく夫松重豊さん始め、柴田理恵さん、毒蝮三太夫さんとか俳優が安定してて、「日本の典型的家族」を描きながらも視点に偏りがないし、むしろ結末なんかは現代的。過ぎておじさまおばさまはついていけるのか?
で三谷幸喜さんが脇役で出てるんですよ。
私、まあ三谷幸喜さんは嫌いではなかったんですが、「鎌倉殿の13人」を観てから、なんてゆーか、この人すごい脚本家なんだなと改めて再評価したというか、いやマジで才能というか、日本も捨てたもんじゃない!って思うに至るタイミングで三谷幸喜さん出ているもんだから、なんとなくこの映画自体の株が上がってしまったというか。
監督は前田哲さん、脚本は齊藤ひろしさんっていう人なんですが、なんで三谷幸喜さん出てるんでしょう。ナゾですが、良かった)^o^(
画面全体的に高齢層で構成されているのも、私は好感を持てまして、だからやっぱり安定しているんだと思いますし、まさに老後の心配が我が身のリアルとしてあるものの、「あるもの」に固執して欲張らず、視点を変えてみれば人生まあまあ楽しめるんだというテーマにも共感でき良かったです。
2位「前科者」
2022日本
ドラマを観るつもりで続編的映画の方を見てしまったんですが、圧倒するものがありました。
有村架純ちゃん演じる若くして保護司、しかも保護司って無償のボランティアなんかい…という日本のセーフティネットの脆弱ぶりを露呈した功績の高い作品。
にも増して、とにかく森田剛さん演じる殺人前科をもつ工藤誠の人生の壮絶たるやたるやで、涙涙。
監督はこれを、森田剛さんの人生を描きたかったんだ!と何故か観た後、確信しています。
監督の岸喜幸さん、NHKのドキュメントやってたり、納得。生ぬるさのない描き方は、そーゆー感じ!
1位「黒い司法 0%からの奇跡」
2020 アメリカ 原題 Just Mercy
事実をベースにした死刑囚の冤罪という黒人差別に抗う法廷モノ。
それだけで観たくなる!
で、お正月にまたも号泣。
いちばん泣いたし、ついこないだの90年代にまだこんな差別があるアメリカ、かつこーゆー作品作るのもアメリカ。
これを作るアメリカがやっぱりすごいなぁと思うし、なぜアメリカが強い国か?って、こんな作品を作れる国だからだと思います。
アメリカを経済や政治でみると、アメリカイズNo.1ってみんな思ってそうなイメージがあるけれど(トランプ大統領だけのイメージ?)
映画の中のアメリカは、自分たちを全然「いい国」なんて思ってないですよ。
アダムマッケイ作品もだし、この映画もですが。
ちなみに監督のデスティン・ダニエル・クレットンは黒人じゃなく、日系の血も入ってるミックスな方のよう。
きちんとアメリカ人がアメリカを批判できるって大切なこと。それができて、そしてこういうコツコツ世の中を変えてきた人たちが実在している事でやっぱりアメリカ強しです。
あと主役のマイケルBジョーダンカッコいい〜♪
全体に抑えた感じの役柄は演技なのか素なのか?分からないけど。
ということで、いろいろ観れた楽しいお正月でした。また今年も名作にたくさん出会えますように。
楽しみだなぁ(´∀`*)