2021年
ここ5年くらいのなかで、「読む価値ある本」ランキングベスト5に踊りでました。
ブレイディみかこさんのいろいろな書物の次には来る勢いです(*´꒳`*)
ネタバレあります。
同時多発テロ911のCIAの失態、1996年に起きたエベレスト登山チームの凄惨な遭難事件、1978年のユナイテッド航空の飛行機事故、白人至上主義から脱却できたデレクブラックをはじめ、そのほかGoogleやプラダの失敗エピソードやら、食事療法の平均値の罠など、実際の事件や研究をベースに、「多様性がいかに大事か」を根拠を持って分析し証明を試みています。
著者のマシューサイドさんがライターだからなのか、読み応えが抜群です。イギリス人著者の日本語訳本なので、多少の言い回しの翻訳的な面はあるけれども、比較的、肌感覚としては日本人の思考にも馴染める方ではないかと。いやむしろ、「忖度してしまう日本人」のために書かれているくらいのシンパシーを感じました。
一つひとつのエピソード自体が濃くて面白いという優れた一面があるんですが、何よりも、その優れた一面をも凌駕するマシューサイドさんの斬新な視点により、読者がこれまでにないような示唆に富んだ発見をもたらされることが最大の魅力でしょう。
多様性という概念はもはや新しくはないけれど、一般的に知られるエピソードや別角度からの研究を、「多様性」という切り口で分析し、多様性を無視したり見逃された結果、あるいは取り入れた結果による、根拠づけの試みは、これまでなかったのではないかとお見受けしました。
人間って、それを言うか言わないかで、たとえ生死がかかっていると分かっていても、立場を優先して自分の意見を表に出さない、そういう忖度を無自覚にしてしまう生き物なんだと改めて驚いたし(アメリカ人でさえ…)、逆に多様なパーソナリティやアイデンティティ、反逆者のアイデア、影の理事会を、柔らかい頭で取り入れることで、凝り固まった組織には出来なかった利益の創出や、損失の回避を成し得ているという事実にも大きな気づきをもらえました。
気づき以上に勇気も貰えたので、なんだかこの春の陽気も相まって気分も軽くなってきた、今日この頃です。
組織って難しいし、理不尽だし、ガッチガチだったりするけれど、それがなんぼのもんじゃいと、好きな方向を見て生きるかどうかは、おのれ次第。
あとバイアスに振り回されない、柔らかい頭でいるために、自分には馴染みのない世界にふれることの大切さ。目先の損得、人の目や忖度で判断しない思考、行動こそが斬新なアイデアや創造を生み出す機会となること。
ちなみにマシューサイドさんは、卓球の元イギリス五輪代表選手だったそうです。なんかよく分からないけどそれもすごい。