Amazonプライムで無料で完結までやっていたので観ました。
シーズン1から7までっていう感じなのですが、すでにシーズン4から「ファイナルシーズン」と銘打たれており、ストーリーがきっちり進むのはシーズン5くらいまでで、6と7は4話ずつで(そこに総集編がつく)、どうにも完結までにおさまりきれずに足した感。でもやっぱり最後まで観ないといけないです。
あらすじとしては、壁に守られた世界が突然巨人に襲われ母を食われたエレンイェーガー少年が巨人への復讐心に燃え、幼馴染の少女ミカサ、いじめられっ子アルミンとともに戦士となって、巨人と戦う、という流れですが、巨人って実はね、というあたりから展開もまた様相を変え…。
要は巨人と人間との戦争と、人間同士の戦争が絡み合う大スペクタル作品です。
いきなりネタバレします。
結末を申し上げます。
巨人によって、人類の8割が死に絶えます。
なぜ、いきなり結末を表明したかというと、かつて人類を8割死滅させた物語があったでしょうか?
いやあったとは思います。
猿の惑星だって、人類が衰退して猿が支配したわけだし、北斗の拳だって荒廃した世紀末だし、ナウシカだって巨神兵による「火の七日間」後のいったん人類が滅亡しかかってその後の世界だし。
でもでも、これらはすべて「その後」の物語なんであって、「進撃の巨人」は「いま・ここ」で人類が8割滅亡しちゃうのです。巨人の「地ならし」によって。
だから、「進撃の巨人」の他にない大きな特色が、この結末そのものであり、どうしてもここを押さえねばいけないと思った次第です。
結末しっちゃったら面白くないんですが、知ってても面白いのは面白いです。でも私なら知りたくなかったなあ。どっちや。
それにしても私にとって「進撃の巨人」という物語は、いったいなんだったのか。観終わって数日経っていながらも、何かこれという答えが導き出せるような、出せないような、未だに考え続けている感じです。
1ヶ月近くほぼ毎日数話ずつ観てきたのですが、ときどき「いったい私は何を観させられているのだろう」とよく分からなくなる時があったりして、もはやアニメをのほほんと観るという行為から逸脱している気は早い段階でしていました。
時にあまりにも死にすぎたり、人種(エルディア人)をさげすんだりの描写が続いたりで、気が滅入るときも多々あり。
既視感はちょくちょくあったのです。
「夜と霧」だったり。
アウシュビッツのドキュメンタリー作品です。
だからアニメ作品っていうもののイメージではなくて、子どもが観るには、いろいろ大人の指導がいるんじゃ。。。というのもありつつも子供も一緒に見ていたのですが。
気が滅入るけど、ここで描かれている「ひどい世界」は目をそらしちゃいけない大事なこと、っていう既視感なのか。
とはいえ「進撃の巨人」の物語としての一番のすごさは、「持続的な大どんでん返し」なのかもしれません。物語が進むごとに謎が明かされていって、お話がどんどん大きくなっていって「え!こういうことだったのか!!」というのがずっと続くので、観ることが止められないのです。
そういう面では、スウィフトの「ガリヴァー旅行記」を読んだ時の既視感に近いのかも。「ガリヴァー旅行記」って、「巨人(自分)がとらえられて打ち付けられて」みたいなのが出てくるので、そこが分かりやすい共通項ではあるのですが(それに似たシーンが「進撃の巨人」にもある。自分ではないけど)、「ガリバー旅行記」がその実、冒険活劇を超えた人間社会を風刺した尖ったSF?ファンタジー小説であるように、「進撃の巨人」もまた、自分に見えている世界って実はちっぽけで、世界は想像を超えた先にある、とか、人類は他者理解せず争いばかりしている、とか、そういうメッセージが諌山創さん(原作者)も、もしかして伝えたかったのかな?とか。
「進撃の巨人」は街や人の描写が18世紀の産業革命時のヨーロッパをほうふつとさせるので、西欧作品が思い浮かびやすいのもあるかもしれません。
何より、このガリバー旅行記のような「外の世界で知る価値観の大どんでん返し」の流れが「進撃の巨人」は実に素晴らしく緻密に描かれており、最初からそういう想定で全編を創作したのかどうかは知りませんが、気が滅入ったりしながらも、「あ!」となってしまう展開に、驚きと同時に考えさせるものがあるというかね。
ただマーレ人とエルディア人、ユミルの民の歴史だったりとかが出てきたあたりから、あまりに複雑なディテールについていけなくなって、きっちり理解するのは諦めました。諦めても面白かったです。
あとね私お決まりの「作品における女子の扱いスコープ」でいえば、原作は別冊少年マガジン連載ですし、少年が主人公なんですが、登場する女子がステレオタイプではなくて、強かったり弱かったりずるかったり優しかったりきちんと多様な個性があって、キャラ立ちもよいのが好感が持てました。
エレンという主人公も実に面白くて、母を殺され巨人を憎む少年に共感していって冒険活劇を楽しませるのかなと思ったいたら、碇シンジっぽく殻にとじこもったり、神がかった宗教家風になってみたり、最終的にはミカサやアルミンという仲間を守りたかっただけなんかと安心したり。
そしてそして、結局人類8割滅亡の原因は。。。
これをバラすのは野暮でしょう。(すぐ結末バラしたのも野暮っちゃ野暮だけど(*⁰▿⁰*))
野暮だし結局今もまだ、「進撃の巨人」をどう受けとめたらいいか分からないまま、他のドラマとかが全然面白く感じられなくなってしまったというか、「人類滅亡の危機に比べたら、現代人の悩みなんか取るに足らない」という感覚にだけは、陥っております。
ということで、人生で1度はぜひ、この「進撃の巨人」における類まれな「ちょくちょくアニメ超えた既視感はあるけど、これという正解が導き出せないどの枠にも収まりきれない圧倒観」を体験することをおすすめします(´▽`*)