2023 斎藤幸平 KADOKAWA
ネタばれ少しあるけど大きくはなし。
齋藤幸平さん版リアル「ディアにっぽん」。
※「ディアにっぽん」は日本各地の市井の人々にスポットをあてたNHKのドキュメント番組
↓ちょっと書きました
コロナ禍に机上の学問を超えて、フィールドワークをしようぜ!という編集部からの企画に斎藤幸平さんも乗り気で始まった毎日新聞連載の書籍化です。
「人新生の『資本論』」は挫折した人も、これなら読める!という読みやすいエッセイです。
タイトルの通り、齊藤さんはさまざまな体験をしていきます。
たとえば…ウーバーの配達員をやってみて、そのシステムのおかしさを感じたり、豊岡市で林業として労働者協働組合を実現しているネクストグリーン但馬に潜入したり、男性メイクをみずから経験して「他人の目を気にしすぎじゃないか」と感じて、西村宏堂さんに「自信がない人が生き方を変えられる道具なんだ」と怒られたり(宏堂さんナイス)、東日本大震災のいわき市の復興の今を見に行ったり、石巻市で持続可能な復興を探ったり、水俣を訪れて公害の歴史と今を勉強したり、ちょうどコロナ禍の時期でテレワークを考えてみたり、日本ではなかなか進まない子どもの性教育を考えてみたり、アイヌの今を知るために北海道のウポポイに出向いたり。。。
全部で23?の場所に行き、話を聞いて、実践し、考えているんですが、正直その数が多すぎる上に、一つひとつは数ページだし、テーマの範囲が広すぎて、全体的な印象としてはちょっとごった煮感。
しかも私が個人的に心に残ったのは、西村宏堂さんが斎藤さんにナイスな突っ込みをする「男性メイク」の回という、ライト系だったりするんですけど(∩´∀`)∩
斎藤さんは現在ちびっ子子育て真っ最中なので、性教育の回もよかったですね。
あと、ウーバーイーツを取材に行くのではなく、実際にやってみたのはすごくいいと思いました。自転車でこけてて気の毒だったけど。
斎藤さんは大阪市立大学(現大阪公立大学)の先生をされているので、関西バージョンが結構あって、「釜ヶ崎にもいったんだあ」という感慨もありました。
✳︎2022年からは東大の先生のようです
とにかく扱っている対象が広範囲なので、「斎藤さんだから消化できるんだよ」とも思います。「斎藤さんだからできるんだよ」というのは若いからとか、お金出してもらえるから、ではなくて、やっぱりそもそもの知見があるんですよね。
だからどのテーマも斎藤幸平さんの環境経済とか資本主義経済と気候変動とか、研究分野での知見を通して考えてみるという感じ。だから扱っているテーマは広範囲ですが、すべてリアルタイムの社会問題に対峙するかたちなので、「斎藤幸平が見た聞いた!地べたのニッポンのいま」として一読の価値があります。
この本のだいご味は、斎藤さんが訪れる先々が、釜ヶ崎とか箕面市の暮らしづくりネットワーク北芝とか、はたまた水俣とか、外国人労働者救済支援センターとか(書ききれない。。。)どこにしろ、草の根で社会問題に地道に取り組んでいる人々であることなんです。
だからこれは、「地味すぎて話題にはならないいけど、地域や地元、誰かのために地道に活動している市井の人々の物語」でもあります。
お金にならず。
日の目をみるわけでもない。
だけど、この世界の小さな埋もれているものに日々向き合い、人生をささげている。
そういう埋もれている人々に出会えるのが本書です。