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子育てと正社員の両立にぎりぎりな40代の母(映画・読書・日々のこと)

子育てしながら正社員として仕事しています。40代の母のブログです。コピーライター、読書、映画、プライムビデオ。育児の悩みや仕事の悩み、広告、マーケティング、家族のこと、ふと思うことを綴ります。

人新生の資本論_気候変動がヤバい時代の大きな可能性を秘めた一つの魅力的な展望

2020年 集英社新書 斎藤幸平著

この本、大ベストセラーなんですって。
・・・みなさんすいすい読めたですか?
私は読破に1ヶ月かかりました(寝落ち多し)

でもね、100点です!いや200点!
もう世の中の見え方が一切合切変わりました!

正直に話してしまうと、最初は何を言いたい本なのか、わからずに読み始めました。
「人新生」=ひとしんせい という言葉にちょっと好奇心湧いただけで。

「人新生」は、地球の地質学の新しい時代区分らしいです。
人類が地球環境に与えた影響が甚大すぎて気候まで変動しちゃって、
ぶっちゃけ地質にものすごく影響を与えてしまった時代ということです。

で、そういう気候変動の時代に対して、斎藤さんはものすごい勢いで警鐘を鳴らしています。
というか、もう警鐘とかで間に合う段階ではなくて、
「残念ですが。。。手遅れです」と言ってるんですね。
あらゆる数値や現状を鑑みて、もういつなんどき、地球が「デイアフタートゥモロー」になってもおかしくないと。
読んでて、この映画がずっと脳裏に。


この本を読むまでは当時16歳のグレタ・トゥーンベリちゃん(もう「さん」か)が、なんであんなに怒ってたのか
正直ぴんと来てなかったんですが、それは40代の私が「未来を生きる人」視点ではないからですね。
グレタちゃんに限らず、うちの息子なんかも、学校でSDGSを勉強してから
まあ、ちょっとしたごみの分別にもうるさいです。やたら詳しいし。
それは、「自分ごと」だからなんですね。
グレタちゃんは、「あなたたち大人のしてきたことのツケを背負って未来を生きねばならないのは私たち子どもなんだ」
と怒っていたわけです。
そのことがやっと&よーくわかった本でした。
(斎藤さんはドイツの大学にいたようで、ドイツだから余計かもとふと思う)

ともかくも、「デイアフタートゥモロー」を見たことがない人は、
絶対に見ておくべきで、そんなことは斎藤さんは何一つ言ってはいないんですが
私たち大人がもたらした結果が、この本の言いたいことが、ビジュアルでより分かりやすく理解できるはずです。
ディザスターエンタメとしても完成度高いので、セットでぜひ。

だからもうね、突然豪雨とか、ありえない場所にひょうが降るとか、竜巻発生とか、ありえない時期に30度超えるとか
そういうのって、もう今当たり前になって久しく、
地球上で人類が生き残る危機をはらむ気候変動の序章であり
もう本章に入りかけている、、もう未来を心配するレベルではないんだよ
「今やばいんよ」ということをこれでもか!と斎藤さんはたたみかけてきます。

そして「なぜもう今ここまできてしまったのか」。
問題はそこです。
とってもざっくり結論から言うと、斎藤さんは「資本主義」のせいだって言っています。
「大企業が、儲けのために、アマゾンの森林を破壊している」というのはまあ言われていることですが
じゃあなんで、大企業はアマゾンを破壊するのか?
なぜ大企業が儲けようとすることが気候変動につながるのか?

世界の仕組みはどうなってるんだ?
という部分で、出てくるのが「グローバルサウスの犠牲」です。
要は欧米や先進国(日本含む)が自分たちの快適な生活のために、
周辺外部の国々の資源や労働を、環境や現地の人の命や健康までも、顧みずに搾取していっているせいだと。生態学帝国主義が行なわれていると。

たとえばファストファッション
私が大好きなユニクロ。気づけば全身ファストリテイリングに投資。
それくらいどっぷり浸かっているんですが、
じゃあ私の服がどこで作られているかって、バングラデシュとかです。
綿花栽培には大量の農薬を用い、40度以上の劣悪な環境での労働、
1000人以上死んだ事故が起こったりしているんですって。
そんなこと日本のニュースで言ってますか?
「知らぬがほとけ」で、いまどんだけグローバル社会っていっても情報ですら先進国や大企業に有利に動いているわけですよね。

だからといって、お金持ちでもない私が、作り手の顔が見える上等な服を買えるかっていう、
そういう庶民の個人が抱えてしまう矛盾こそが
「知」がもたらす二律背反のストレスなんですが、
まあでも、パリジェンヌは10着しか服を持っていないらしいので

私も「本当のおしゃれはユニクロで毎年Tシャツをイロチで買いあさることじゃない」という認識をもっと強く持つべきだと思います。
ユニクロでもいい。10年着れるように大事に使う。

かといって、もはや右も左も前も後ろも、何をしたって「環境破壊なんじゃないか」というくらいに普通にあふれかえっています。大量生産バンザイ。
激安バンザイ。
グローバルサウス産のものも含めて海外依存度高い日本。自給率の低さ。
グローバルサウスの人々への想像は想像にすぎず、外部依存による「自分は快適な生活」に慣れてしまっています。
だから、この本を読んでいると、「じゃあどうしたらいいんだよう」という気持ちになってきもします。

そこで。
斎藤さんが言うには・・・「晩年のマルクスが割と答えを出してんだよ」というので「資本論」につながってきます。
正直、マルクス資本論はとっても分かりにくいので(高校生の時に9ページ目で挫折)
げーっと思ったんですが、そこが後発の学者さんの良いところで、要点をまとめて書いてくれています。
とはいえ「それでも分かりにくいよ・・・」というのが、正直な私の感想。
でも頑張って読み続けてそれをかなりざっくり、まとめあげますと

「協同組合による参加型社会」
これこそが気候変動にも対応する、資本主義ではなく、真の「脱成長」の、社会主義な視点での社会のベストなあり方だと斎藤さんは言っています。
本当はもっと、この結論に紆余曲折といろんな理論を展開の上でたどり着いていて
これ本当に「最終章」で言っている最後の最後の結論なんですが。。(あっさりネタばれ)

だから、文字のイメージで解釈すると間違ってしまう可能性もあって
斎藤さんが言っている「協同組合による参加型社会」がどういう意味かというのはやはり読んでもらった方がいいです。


「とにかく儲けずにはいられない」資本主義はやっぱり、「絶対的デカップリング」「グリーンニューディール」「再分配」「経済停滞という意味での脱成長」
とかではどうしようもなく、そもそも資本主義を許容しながら地球環境やグローバルサウス問題をどうにかするのは土台無理なんです。と。
(出てくる言葉が聞いたことないものばかりで・・・(*´Д`))

ただ斎藤さんは「協同組合による参加型社会」はすでに現在、実践されている事例もあると、いくつか紹介してくれています。
たとえば、「フェアレス・シティ」です。
スペインのバルセロナが有名らしく、バルセロナの「気候非常事態宣言」は2050年までに二酸化炭素排出量「ゼロ」を宣言していて、グローバル企業と対峙する姿勢を示していると言います。これにはバルセロナがもともと市民や労働組合による社会運動が活発だったという背景もあるそうですが、バルセロナ・アン・クムーという市民政党の市長が誕生し、草の根の声を採り入れる市政を行なっています。
市民運動を10年以上かけて培っていった成果だそう。

他にも、GMが撤退した廃墟で有機農業を始めたアメリカ・デトロイトの「ワーカーズ・コープ(労働組合)」。
誰もが無料で食べられる「公共の果樹」を育てているコペンハーゲンのエディブルシティ運動。
などなどを取り上げています。

で、これらの運動は、取り組みのノウハウを、世界のあらゆるコミュニティに「どうぞどうぞ」と提供していっているそうです。
横の連帯が非常にあると。
そして「グローバル・サウス」の考え方も大いに取り入れられていて、エクアドル憲章にも組み込まれた「ブエン・ビヒール」(よく生きる)は、経済成長ではなく、先住民の知恵・工夫から学ぼうという考えだそう。

そういえばブレイディみかこさんの「他者の靴を履く」でも出てきたんですが、「エッセンシャルワーク」にも触れています。
コロナ禍はじめ、どんな時も人の暮らしのために欠かせない「仕事」ですね。
医療や介護、教育。スーパーの店員さん、パン屋さん。

彼らの給与水準が低く、ホワイトカラーと言われるブルシットジョブが高給というのはほんと、間違ってると。
ブルシットジョブとの対峙がまさに、斎藤さんの言っているお話。(ディビットグレーバーさんのことも触れてます)

そうそう、私が積読しっぱなしのトマ・ピケティさんも「21世紀の資本」の時より、全然考えが変わって、マルクス社会主義的な社会を推奨してるんですって。

マルクスの理論は分からないとしても、斎藤さんのいう「市民が主体の自分たちのためのいろんな運営」というのはとても分かりやすいです。
電気もガスも、インフラ運営は地域の市民。
(通信も市民運営だったら、こないだのauみたいな全国的な電波障害にはならなかったのかも?)
そこで方針を決めるのも、働くのも、市民。
「自分ごと」だと責任も感じて「儲け」より「実用」「安全」などで判断しますよね。
なるほどと。


こういう考え方は、世界的には割とすでに浸透していて、もはや「常識」の一部なのかもしれません。
日本じゃメディアで誰もあんまり言ってない気がします。
やっぱりこう、いろいろ遅い感じ。。

ということで、斎藤さんの気候変動には今の資本主義じゃ駄目だというお話に
最初は「そうはいっても、だからって、急に田舎で有機農業やりだしたり、田舎のコミュニティも入りづらそうだし、そういう田舎のコミュニティが女性の多様な生き方に柔軟かと考えたら疑問だし、
一応フラットで多様性を内包してくれる都会での快適な生活を変えることは難しい」と思って読んでいたんですが、
そうじゃなくて、「儲け」じゃない生産や労働のあり方を追求する方法があるって言っているんですよね。
それはつまり、都市生活のなかでも相互扶助のある市民主体の共同and協同組合がいろいろ決めて作っていく社会なんだと。

すでにいろいろな場所で始まってるんだと。
確かにこれならできそう。
しかももう、そうならないと気候変動がやばいんだなと。
日本の世の中が実際に、いつ、そうなれるか、いやなれないのかも?
だって市民運動、苦手やん…
空気読んで声をあげないやん…
既成の価値観に従順すぎるやん…

そこは分かりませんが、「人新生の資本論」が語ることは、
大きな可能性を秘めた一つの魅力的な展望であり、指針といえるでしょう。

それにしても、読んで、本当に目からうろこ&開眼したことが多くって、
自分の環境問題に関する認識の甘さを知ったということもありますが、
マルクスとか資本論とか大上段に構える学問が、実際の生活に結び付いていることが知れる本」という意味でも、非常に価値があったなと思います。