最初、タイトル(と表紙絵)がずっと気になっていて、作者をよく確認せずに古本を買ったんですが
いざ読もうと思って「あ」と気づいたら今村夏子さんでした。
面白さがじわじわくるといえば今村夏子さん。
ということで気づけば3冊目です。
tsubatarou.hatenablog.com
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3冊目で確信したんですが、今村夏子さんの作品は
ストーリーや登場人物の「背景や全体像がみえない」という特色があるんですね。
あらすじは書かない方がいい作家作品の代表の一人です。
ネタばれすると絶対ダメ系。
一体どこに連れていかれるのか分からないまま徐々に「え!この人って」とか「そういうことかい!」とかとか
この読み進めながらじわる感じがたまらなく「おもろいやん~」となるのです。
なので、ざっくりと背景だけいうと、
「むらさきのスカートの女」という小学生の怪談話に出てきそうな人物を
執拗にウォッチするのが、主人公の「黄色いカーディガンの女」(自称)であります。
もうこれ以上は書けない。。。
とにかく、この表題の「むらさきのスカートの女」の語感、響きだけで
ちょっと陰気くさい、ちょっと「ユリゴコロ」に似た怪しさを想像はしそうになるんですが
今村夏子さんの作品って、そうじゃないんですね。ホラーとかミステリーじゃないのです。
なんていうか、髪や服装やいでたちで、その人にあるだろう生活状況などをすごく想像させるんですが
登場人物は底辺らへんの人で、基本的に「貧しい」んです。
その貧しさは、一寸先にこの人がどうなるか分からん…という危うさをまとわせながら、同時に「おかしみ」をはらんでいます。
フシギなもので貧困のやるせなさと同時に、生きることのおかしみみたいなものを感じさせるので
読んでいると妙な「心地良さ」が湧いてきて、最後には「おもろいなー」と独りごちてしまいます。
そして、この奇妙な登場人物たちは、貧しいながらも自分としては真っ当に生きようとはしていて
ちょっとした気苦労や社会とのズレ感にえらく共感しながら読み進めてしまうので、
「むらさきのスカートの女」よ!どうか!ハッピーでいてくれー!という凡庸な希望を込めるんですが、
結果「ん?これは…どうとらえればいいのだ?」という結末を迎えるので
それがまた面白いんです!
うーん。芥川龍之介や太宰治、夏目漱石を読んでいるような感覚に似ているかもしれません。
とかいって「蜘蛛の糸」「走れメロス」「心」とか教科書に載ってたのしか読んだことないけど(*'ω'*)
きっとそんな感じなのではないかと!
でもでも、上記の文豪たちより私は好きかも!
女性の視点への共感度が高いというか、寓話性やうんちくが一切なくて、
それなのに社会の底辺らへんの視点、生やした根っこから少しもぶれずに世の中を見つめるような巧みさ、鋭さは
これはもう才能なのかなとも思うし、夏子さんの文学や「書くこと」への愛情というか
分からないですが、こういう作品を書ける人というのは
ご自身がかなり面白い人なのではという気がしてきます。
物語としては大したことは起こりません。
それなのに、これだけ面白い。
じわる。
ほっこり優しい気持ちにもなる。
すばらしいなと思います(*´▽`*)
NHKあたりでドラマ化したら絶対みる~☆彡