2019公開 アメリカ
Huluでみたかも。
「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督ということで意気揚々と観ました。
切り口が違うので、なるほどピール監督な~というほどな感を感じれなかったのですが(ゲットアウトしか知らんしな)、やっぱり共通しているのは「アイロニー」でしょうか。
皮肉が効いているなあと。
ネタばれあり。
ざっくりあらすじでいうと、バカンスに訪れたファミリーが、自分たちと瓜二つな容姿のファミリーに襲われ、逃避しながらバトルというサスペンスホラー作品です。
ストーリーを追う上では、なんというか、まーフツーのホラーです。
13日の金曜日でもいいし、スクリームでもいいし、パリピ的なまさかの状況で狂人が襲ってきた!逃げろ!だいたい型どおりに脇役殺されて、主人公たちが急に機転や運動能力やアドレナリンが爆発して、そしてなんやかんやと運がよくて逃げおおせ、でも最終ナゾを残して…という。王道っちゃ王道だと見受けました。
ただ。
襲ってきたのが「地下で生きているクローン」みたいなそっくりさんなんですね。
ここがなかったという感じでしょうか。
で、ですね。この「地下で生きるそっくりさん」ってなんだ?というのが、映画の中ではっきり語られてましたでしょうか?
だいたい何か大事な部分があっても見逃しがちな私には分からなかったんですが、アメリカ政府が人類の安泰と発展の政策として「影」「負」を追う要素としてクローン人間を作った的なことだと思います。
そしてそして、地下のそっくりさんの彼らは、自分たちが地下で人生を押し込められていることに不満を持ち、反逆を図り、地上の人たちを襲いだした、ということなんですね。
で、これはいわばメタファーなわけです。
じゃあ何のメタファーかです。そこは自信を持ってほぼ語られていない気がします。
私が思うには、同じアメリカでの富裕層と貧困層というよりは、豊かな暮らしを満喫している先進国とその先進国のためにさまざまな犠牲を払わされている途上国ではないかと。
日本が先進国かは以前よりあやうい感じですが、まあでも途上国の資源をむしりとり、低賃金で馬車馬のように働かせ物資を輸出させてるというこの世界の構図そのものを暗喩しているんじゃないかと思っています。
まあこれ、私ってば本当に悪意ある言い方になってしまっています。
私ももし「あなたってさ、アフリカとか南米とかから搾取してるよね」と言われたら
めちゃくちゃ違和感あります。
だってそんな意識が先進国に生きる人にこれっぽっちもないですものね。
一部の人たち除けば。「私が何をした?」と思いますものね。
ただでさえ、「いや自分も貧困層ですし」とも思うし。
だからです。だからメタファーなんですよね。
ピール監督。
そういうの露骨に出して伝わらないから。
こういうメタファーを深読みしたときに、最近思うのが、じゃあ私が今この買っている「お惣菜」だったり、「Tシャツ」だったりが、「スマホ」だったりが、どういうルーツで何を資源にして私の手元まで来ているんだろう?ということを考えたりします。
そういう作り手の顔が、まったく見えなくなっている現在社会において一方で、「誰が作ったか見える世界」というのも生まれてきていて、お野菜売り場に生産者さんの写真や名前を載せたり、どこの国で作られているとか、しっかり説明したり、そういうのも目にする機会もあります。
かといって、私自身はこれまで農家のおっちゃんの顔みても「へ~」くらいでそんな意識してなかったんですが、「誰が作っているのか」ってもしかしてものすごいものすごい、大事なことなのではないかと。
そしてそれはどうやって作られていて、作るのに、いくらかかるのか。
この世の中の仕組みです。
世界は近づいた。
でも私たちはこの世の中の仕組みを本当にちゃんとわかっているのだろうか。
むしろ全然わかってないんじゃないか。
そしてのほほんと知らんままでいたらいつか、目に見えない場所に潜む「何か」から、びっくりするくらい突然に反撃されるんじゃないか。
ピール監督、合ってますか?