2015 スウェーデン
ほのぼのあたたかい気持ちになれました。
ネタバレあり。
主人公のオーヴェは偏屈ジジイです。
幼い頃に母を亡くし、巣立つ頃に父も亡くし、家も火事でなくし、なんにもなくなったオーヴェ。妻と出会い、鉄道職員として妻と暮らしてきました。
最愛の妻に先立たれたオーヴェは、定年間際にリストラされます。
えースウェーデンにもリストラ、あるんですねぇ。
スウェーデンって福祉社会だから、めちゃくちゃいい国なイメージがあるんですが、そんなふうにリストラだったり、福祉施設の人間の無慈悲な態度や決まりだからというやり方が描かれていて、妙に驚きました。
オーヴェは鉄道会社の清掃員です。父も同じ仕事でした。
妻と2人慎ましくも幸せに生きてきたオーヴェですが、妻に先立たれ、職も失ったオーヴェは、妻の後を追うために自殺を図ります。
そこにです。
隣に越してきたペルシア人のパルバネとその家族たちが何かとうるさかったりして邪魔をします。
いや本人たちはそんなつもりは全くないんですが、、だってオーヴェが首吊りやガスで死のうとしてるなんて知らないですから。
でそのイラン出身のパルバネは2人の幼い娘と足骨折した夫がいて3人目を妊娠中でして、あれこれオーヴェを頼ってきます。
オーヴェは偏屈ジジイなので口ではキツく突っぱねるんですが、結局見かねていろいろ助けます。
パルバネだけでなくて、文句を言いつつ、オーヴェはなんやかや人を助けるんですね。
そうやって周りと思いがけず関わっていくうちに、オーヴェは死ねなくなって、むしろ死にたくなくなっていきます。
全くの他人である誰か、目の前の困っている人によって。
この映画は日本でもだいぶ前から深刻化が進む孤独な独居老人問題を扱っているんですが、問題はじゃあこの映画ではなぜに妻に先立たれ後追いを考えていたオーヴェが死にたくなくなったか、です。
そのきっかけ、キーパーソンはやっぱりパルバネなんですね。
オーヴェが語るシーンで分かるんですが、パルバネは「イラン戦争を生き抜いてきた人」です。
オーヴェが、運転ができないパルバネに実地訓練するシーンがあるんですが、泣き言をいうパルバネにオーヴェは「イラン戦争を生き抜き、ダメ男と結婚し、2回もの想像を絶する苦痛に耐えて子供を出産したあんたなら、運転くらいできるだろ」と。
そこでパルバネ、そんな苦労人だったのかと。ちなみにパルバネって、全然「移民然」としてないっていうか、まあまあ気が強くて強引めなお姉さんというかおばちゃん?ですが。
移民然ってどんなんやて話だけど。
ヨーロッパの移民問題に疎い私なんかは、パルバネがペルシャ人だよってだけでは、その背景までは分からなかったから、ここで「はあはあ」と。
で、オーヴェがそのことに詳しいのも、意味があると思いました。
狭い世界の狭い価値観で生きてきたように見えるオーヴェがね。
実は社会をよくみていて、他者の人生の背景を想像できる人であること。
そう、まさにオーヴェが死にきれなかった理由、人ときちんと絆を築ける理由、孤独でも幸せでいられた理由は、ここにある!
と私は思います。
お金?
血縁?
地位?
そんなものが一体なんだっていうんでしょう。
大事なことはそこやねん!
そんな風なことを語ってくれている気がするこの映画には、めちゃくちゃ共感。
だけどほら、ついつい忘れてしまいそうになるから。
思い出させくれてありがとう、と。
また、重くもなりがちな独居老人モノ?ですが、全く暗いタッチでは描かれてなくて、半分コメディというか、ユーモア溢れる脚本と演出なのも、よいですね。
全体にほのぼのしています。