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子育てと正社員の両立にぎりぎりな40代の母(映画・読書・日々のこと)

子育てしながら正社員として仕事しています。40代の母のブログです。コピーライター、読書、映画、プライムビデオ。育児の悩みや仕事の悩み、広告、マーケティング、家族のこと、ふと思うことを綴ります。

人は この支配(暴力)からの卒業 はできるのか

 

 

読書好きの会社の同僚が貸してくれて、返さぬうちに同僚が会社を辞めてしまい、そのまま借りパクしていた本。

辞める時に返そうとしたんですが、まだ読んでなくて〜と話したら、あげますと言われました。

 

それが3年ほど前で。やっと読みましたよ。Tさん。

時間かかってごめんなさい(*´Д`*)また会いたいです。

 

三浦しをんさんは「舟を編む」の人です。「光」はその前に書かれたようで2008年初版。

ネタバレあり。

 

美浜島にくらす信之、美花は幼馴染中学生カップル。同じく幼馴染の小学生の輔(たすく)は父親に毎日殴られていて痣だらけ。ある時、島を津波が襲い、島がほぼ全滅します。生き残ったのはこの3人と輔の父親と実花をレイプする山中と灯台守のおじいさんだけ。

 

それから20年くらいが流れて大人になったそれぞれがいびつな形でまた繋がっていきます。破滅に向かって。

 

まあ重いです。

 

テーマは暴力です。

暴力は暴力で返ってくる、みたいな内容が要所に出てきます。

 

にもまして、読んでいてとにかく気が滅入るというか、心がざらついたというか、まんじりともしなかったのは、出てくる登場人物が全然いい奴がいないっていう部分に尽きまして_:(´ཀ`」 ∠):

 

主人公?の信之筆頭に。

 

でですね、美浜島を襲った津波がきっかけに、てな感じに思えるんですが、津波で人生狂ったんじゃないよね、これ。

 

信之はそもそもイケズだし、美花は利己的だし、輔はこじらせてるし。

 

子供を毎日殴る虐待親父の輔の父親はいわずもがな、最悪で。信之に殺されたカメラマンの山中は最初から昔風のロリコン親父キャラだし。

 

ただいちばん謎なのは、やっぱり信之で、彼がなんであんなに歪んだ思考の持ち主なのかが最後まで分かりませんでした。

 

最もかわいそうなのか輔かなと。

 

で、この小説がさまざまな暴力を描いてるという前提で整理してみると

 

子への虐待 →輔の父親、酒乱という南海子(信之の妻)の父親、信之と南海子の娘、椿ちゃんに対する南海子のいろいろ

性暴力→山中、椿ちゃんの事件、あと私は美花に対する中学生信之も入ってる思う

津波→島民ほぼ全滅

 

という感じでしょうか。

確かに全部、形は違えど人間のさまざまなものを破壊するという意味では暴力です。

でもあれ?と思いまして。そもそも津波自身は暴力じゃないと。読んだ後も、やっぱり津波ってそもそもメインテーマにそれほど関係ないなと。

暴力ってのは支配の手段だから。

自然がもたらす圧倒的な力は、人間を支配しようという海の神ポセイドンの仕業ではない限りはやはり暴力とは一線を画すし、先にも書いたけれど、津波があってもなくても、登場人物たちの性根のゆがみ具合は関係なくて、もとから曲がりまくっています。

 

面白いくらいに。

 

ではなんで、信之も実花も歪んじゃっていたのか。津波に見せかけて、津波が原因じゃないなら何があったのか。

 

私の見解としては、父親からの輔への暴力がすべてだと思います。

というか、それを見て見ぬフリして糾そうとしない島すべて。というか。

 

このぱっと分かりやすい感じでない暴力の怖さがしをんさんの、うぬうっていう上手いところなんでしょうね。

 

輔の視点が全てです。

津波が来て、輔への虐待を見て見ぬふりしてきた島民たちが死んでしまった。それを喜ぶ輔。

でもいちばん死んで欲しかった父親は生きていたと知った時の輔の絶望。

 

輔ビジョンでは、

虐待を見ぬフリをした島全体の「暴力」に対して、津波という報復があった。

父親には、酒に飲まれ死ぬという報復。

けれども輔自身も、大人になってから、かつての山中殺人で信之と美花を脅迫し、そのせいで信之に殺されます。

だから暴力には暴力が帰ってくる、てな理屈なんだと思うんですが

ただ私は輔が暴力で返されるような暴力をどの時点で行ったかが分かりませんでした。報復の割に合わないんです。輔だけは。

 

輔の人生って何さ、と。

 

それがこう小説のテーマのロジックに合わないから、どこかで輔は暴力を使って何かを支配しようとしたか振り返ってみたものの、読み取れず。性格はひねてしまっていても、なんか常に支配される側じゃない?と。

 

うーん。

 

ということで主人公として信之視点で見てみても、信之の性格の悪さに共感はなかなかしにくいし、輔はひたすらやられぱなしで悲しすぎるし、救いがあんまりないです。

 

でもひとつ。

信之が最後、家族のもとに帰るところ。

あれはなぜ信之が帰ってきたか?

私はあれはただただ娘の椿ちゃんのためだと思うんですね。ため、っていうか椿ちゃんへの思い?

 

冷徹な鉄仮面の信之が、それでも平穏に生きたかった、そして南海子と椿ちゃんという自分の居場所を見つけた。

 

結局誰にも心を開かないだの妻を愛してないだのいいつつ、なんやかやで愛してるやん?それ。

みたいな。え、そんなオチちゃうよ?って三浦しをんさんに言われそうですが、そこは読者の自由な解釈として(´∀`*)

 

なんにしろ、性格が腐りきっている信之も、椿ちゃんという我が子の存在には安らぎを感じられるようになって良かったね、という結論。

 

にしても…割に合わない輔よ…

割もクソも暴力の連鎖は誰も救わないということでしょうか。

 

いい奴、一人だけいました!

いつも何故か大変なときに現れて助けてくれる団地の山内のおばちゃん(*´∀`)♪

 

 

今ふと輔は何かのメタファーかなという気も。。

追記。

今しをんさんのwiki見たら、キリスト教系の学校出身とな。

もしかして輔はイエスか?との想像をやっぱり〜?と勝手に思っていますが、果たして分からないです。津波ノアの方舟の洪水とか、いろいろ想像中。

信之は対極にいるから、全然そのあたりの知識ないから分からないけど、イエスが処刑されるのを見に行った群集や裏切り者のユダとか?

 

それで信之の妻の南海子ですが、小説では美花よりこの南海子が割と重要だと感じています。

 

輔は意外と人を助けていて、それが一番は南海子なのでは。あと彼女?の。

輔の全体的な救いのなさに、なんだか希望を見出したくなってそんな妄想をしたのかもしれません。