2022 日野田直彦
東大をトップとした日本の大学入試のあり方に異をとなえ、海外の大学進学を視野に、世界に通じる人をめざせ!という若者への「イマドキの進路指導」的一冊です。
日野田先生は、塾講師から大阪の公立高校の校長になった人で、箕面高校で自分が実践した改革を中心に、「狭い日本を飛び出さそう」という段階の話ではなく、もう「飛び出さないと生きていけないんだよこの先」ということを提唱されています。
なぜにというと、2050年問題というのがあってです。その頃には今の職業のほとんどがなくなっているのではという「変化がスピーディすぎる」問題ですね。おどろくほどに変化が激しいグローバルな時代において、日本で受験戦争で戦うことってほんとにムダで、それより自分でモノを考えプロダクトできる人間になるために世界の大学で勉強したり、世界を視野に動いたりした方がいいよって話。
めちゃくちゃ共感。
日野田さんのすごいのは、それを「特別な私立校」で実践するのではなく、偏差値は50のフツーの公立高校で実践したことです。
具体的には、受験対策用の授業をなくして、英語授業や海外研修を充実させています。
その英語授業にしろ、海外研修にしろ、大きなコンセプトは「自分たちで考えてつくる」。英語授業は先生の授業に生徒が批判的精神で意見をしながら、「どうやったら面白い授業になるか」を作っていくという「なにそれ、そんなんあり?」という発想のすごい授業を実践し、海外研修では、アメリカの起業家のタマゴたちと一緒に自分たちで実際にプロダクトを開発していくプログラムをさせます。
要は英語を話せるようになろう!とかいうレベルではなくて、自分で考えて自分で判断し、自分で何かを作って、それをきちんと表現して(英語で)プレゼンし、フィードバックで改善したり、失敗を重ねてタフになったりしていこうっていうのが土台の教育です。
これにより結果として箕面高校は海外の大学への進学率が格段にあがって(というかおそらくゼロだったのが)、同時に偏差値や全体の進学率や進学校のレベルがあがったというね。
でも日野田さんがやりたいのは、「人気高校をつくる」ではなく、それはあくまで手段で、要は「教育ってのは生きていくのに役立たんといかん」というシンプルな発想なんです。
戦後、高度経済成長のなかで、企業を成長させていくのに必要だったのは従順な「犬」だった。それによって、大多数の中流家庭を生み出し、GDPが世界3位になって個々が幸せも描けた。
でも今、その従順さは日本の成長を止め、世界に通用するどころか、「いい大学入ったら人生安泰」みたいな価値観で、国内でも何も生み出す力をもたないようになってしまった。
右に倣えの従順さを良しとする価値観は実に排他的で保守的な価値観で、多様社会に適合しにくいし、アイデアが育まれにくいのも分かるし、確かに日本の教育は昔から今もずっと「自分の意見をいう」「自分の考えを伝える」を学ぶことを疎かにしているので、
それはもう自分の学生時代や今の職場でもそうだし、今の子どもたちの学校環境をみていても「めちゃくちゃ分かるわ・・・」の一言に尽きました。
特別な方針の私立学校ではなく、フツーの公立中学や公立高校が変わるなら、というか変わらないといけない。
もうそういう段階にきてるよと。
実践してみたらできたんだから、やる気になればできるんじゃねと。
日野田さん自身がインドネシアで子供時代を過ごした帰国子女で、日本に帰ってから、学校に馴染めずに挫折した経験があるんですよね。
だからこそ日本の教育の課題を俯瞰して感じたのも納得なんですが、それにしても箕面高校って大阪!
こんな身近にそういう面白いことしている学校あったんだなあ(*'ω'*)
日野田さんは今は東京の底辺といわれる私立学校の改革に取り組まれているそうです。
いやほんと文科省、ぜひ。
あと、巻末に「実際に海外の大学に進学する具体的な方法」も載っています!