我が家のお嬢ちゃまが、映画を観て感動したらしいです。じゃあ原作の小説を読もうよーっておすすめ大作戦。
結局わたしだけ読みましたとさ。
ネタバレてます。
「誰かの死」ではなく、20代の「私の死」を描いた小説です。私小説に近い傑作です。
難病で20歳で余命10年を宣告された主人公。生きた証を残すための7年と死の準備をしていく最期の3年。特に最期の3年の、経験者だからこその肉迫した描写にやるせなくなりました。
若いのに、まだまだ若いのに、まるで老衰した老人のように、奪われていく肉体の自由と心。長く病気と付き合うということをよく分かっている人の告白です。
私ももうすぐ50代。若さよりも、老いの気配を感じることも増えるわけで、昔出来ていたことが出来なくなることをしばしば身に染みて感じることもあります。
でも、その怖さをまだ本当には知りません。
ただ、うちのお父さんが癌で亡くなる晩年の様子は知っていて、日に日につのる本人の衰弱ぶりや苛立ちを目の当たりにはしています。
それを知る限り、一つずつ出来ないことが増え、食べたり話したりだけでなく、人としての最低限の自由が奪われて、もはや目に移るものさえ小さく閉じ込められていく。
生きる気力を削がれ、その絶望、小さな希望、葛藤。
ヒトはキレイには死なないって知りました。
死と向き合うってのは、過酷です。
父のように70年以上生きたとしても、まだそんな覚悟が持てないのに、若さはより現実を受け入れ難くするはずです。
特に印象に残ったのは、主人公が必死に孤独を受け入れようと、死との折り合いというか、準備をしていくラストの方。文庫化で加筆されたという闘病部分です。よくぞ書けたなと。
ごめんということ、ありがとうということ、好きですということの全てをやりとげ、思い出を胸に、全てを捨て、ただ家族だけが実質的に私を生かすものとして残り、でももう生きることから解放されたい。
でも解放されるためには、死の恐怖を体験しなければならない。
主人公は、好きな人と出会い、親友と呼べる仲間を見つけ、漫画を描く事で自分の生きた証を残します。
だけど、言うんです。
どんな生き方だったとしても、同じように死んでいくんだと。
主人公が死と向き合う姿や心を描いた数ページが胸に迫ります。
私はどんな風に死ぬんだろう。
きっとやっぱりキレイには死ねない。
だけど、生きなければならない苦しみもまた、残された人にある。
だから死ぬ人は孤独に死ぬ方がいい。
でも、寂しい。
その寂しさを、老いがゆっくり教えてくれ、いつかああ、死に向かうのはこういう感じなのかと準備ができるならば、老える事は少し幸運なのかもしれません。