2020 上間陽子 筑摩書房
✳︎更新追記---------
上間陽子著作は「海をあげる」よりも「裸足で逃げる」を先に読んだ方が、流れがよく分かってよいです。
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なんでか勝手に10歳くらい下の方かと思い込んで読んでいて、最後にプロフィールを読んだら上間陽子さんは、琉球大学の教授で、少し上の同世代の方でした。
たぶん幼い娘さんの話が混じっているからか?
うちの子はもう18を過ぎた成人なので、それで勝手なイメージから少し世代が下の方かなと。
上間さんは東京や沖縄に暮らしながら、研究者として、風俗業で働く若年層の女性の聞き取り調査をしています。時に私生活にも話はおよび、自分が育ってきて、今なお暮らす、米軍基地のある普天間の、毎日の轟音、辺野古に移転させようとする国への抗議活動なども含めて、沖縄が抱える根深い問題を、当事者として語ります。
また、上間さんの研究調査は、風俗業で働く若い女性たちから聞き取りをしながら、その背景にある貧困や虐待、性暴力を含む劣悪な幼少期からの環境などにまで踏み込みながら、時に調査の枠を超えた関わりのなかで、彼女たちが直面する耐えがたい重みにそばにいながら寄り添って、素直な怒りや悲しみや無力感への嘆きが語られてもいます。
上間さんが、どのようにして、これらの研究をするに至ったのかは明記されていませんが、普天間基地そばで育ったという経歴は、彼女の調査テーマとは決して無縁ではないでしょうし、プロフィールには2016年にうるま市で怒った元海兵隊・軍属による殺人事件をきっかけに性暴力について書くことを決めたともありました。
個人的にではありますが、私自身は、沖縄に血縁はないけれども、ライターの師匠が沖縄出身で、何度か沖縄に連れて行ってもらって、しかもそれが、観光とはちょい違う沖縄体験だったので、第二の故郷というには大げさですが、なんとなく身近な場所で。
さらに基地問題やら海の汚染や観光地化による環境問題にしても、母が割と話題にしていたり、実際に沖縄に行って抗議活動をしていた時期もあったりして、なんとなく当たり前に沖縄の問題はあった気がします。
なぜに沖縄に縁のなかったはずの母が抗議活動していたのか?子どもの頃はふしぎと疑問に感じなかったけど、今となってはナゾしかないですが。
日本で唯一の地上戦があった沖縄戦のドキュメントもよく見ていたし、ひめゆりの塔でメンタルがやられたり、あと最低賃金が全国ワーストワンだし、リゾートホテルや観光に行ってても、バスや車で街を走れば、普通の街並みのさびれ具合に愕然としたりする、そーゆー沖縄も分かっていたので、上間さんが語りたい、伝えたい怒りや悲しみをよそ者なりに想像できるというか、華やかな「リゾート沖縄」の一方で、そーゆー負の遺産を抱え込まされてきた沖縄を含めて、私にはやはり沖縄は特別に近い場所だと感じています。
憧れと悲しみと。
こっことアムロちゃんと。
そしてこの本からまた、貧困、基地問題が現実に何も終わっていない、いまだなお終戦からずっと抱えさせられてきている沖縄の悲しい姿を、突きつけられました。
この現実をいつか闘ってきた過去の思い出にできる日がくるのか。
未来に、子どもたちに、今よりいい沖縄を託していけるのか。
それは沖縄という名の、私たちの故郷の一部の物語であり、私たち自身の今と未来のことなのだと。
知っていなければなりません。
リゾートな沖縄しか知らない子どもたちにも、きちんと伝えていかねばね。