2015 アメリカ
Huluにて。
ネタバレあり。
これでアカデミー主演女優賞を獲ったブリーラーソンは確かに素晴らしいです。
でも、輪をかけて作品自体が素晴らしいですよ。
17歳で誘拐&監禁されて、レイプされて出産して閉じ込められた納屋で子育てする主人公。この壮絶さのなかで、主人公は子供との脱出を計画します。
原作はエマドナヒューというカナダ人作家の小説だそう。
フリッツル事件をベースに書かれたものだそうで、フリッツル事件はオーストリアで実際にあった父親による娘監禁事件です。なんと24年…
言葉にならない悲しい出来事です。
映画では後半、脱出が成功した後の物語になっていて、そこでの2次被害を描いています。
ジャックのママであるジョイは、7年ぶりに両親のもとに帰るんですが、両親は離婚していて、お父さんがまたダメで、誘拐犯とジョイの子供であるということから、孫のジャックを見ることすらできないんですね。
これ傷つくなー。
伊藤詩織さんが言っていましたよね。
被害者が受ける2次被害。
まさにそれです。
しかも実父からそんな扱いを受けるなんぞ、距離が近い分悲しみも深いですよ。
逆にお母さんの新しいパートナーさんは、距離があるのもあるんでしょうが、ジャックにフラットに接します。
きちんと他者を他者としてフェアに見れるタイプなんですよね。
ジョイのお母さん、パートナーの選択し直し、正解です。
まあそんなこんなやら、世間の好奇の目やら、
助かったのに、被害者はさまざまに辛いって話なんですが、やっぱり動物と子供は強いです。
動物や子供の友達は、世間にとらわれないし、裏表もないです。
私はこれまでペットを飼ったことがないですが、子供が社会に馴染むために動物とまず仲良くなるってかなりありだなと思いました。
世界を肯定するために。
他者を他者と知るためにも。
ジョイが素晴らしいのは、監禁中、子供を育てていたことです。17歳で監禁されて、出産して子育てするその知恵と忍耐って並外れています。
それを実父やインタビュアーは分かっているんでしょうか。
弁護士費用を稼ぐためにジョイはメディアインタビューを受けるんですがその質問で
「なぜ産んですぐに施設に預けるように犯人にお願いしなかったのか?」というのがあるんです。
それにジョイは答えられないんですね。で、その夜自殺未遂を図ります。
私ならあんな質問しないな、と思いました。そんな犯人の人道的価値観をあてにした方法を取るなんぞリスク高いし、生まれてきた子供と一緒にいたいって普通に分かるから。
逆に、インタビュアーに、生まれてきた自分の乳飲み子を、他者の人権も人格も蔑ろにする犯人の手に預ける無謀な判断が最善なのですか?運良く乳飲み子が養護施設にたどり着いたとして、そこがたまたま運良く立派な養護施設だったとして、それが子供の幸せになると何を物差しに言うてるの?と聞きたいです。
インタビュアーは、子供をそばに置いたのはジョイの利己的な判断だと言いたいのかもしれないですが、そこに踏み込むには、彼女を批判対象にするには、あなた側=個人でないメディア側から差し出される献身や誠意や想像力がなさすぎやしない?と。
早い話、話聞いてるだけのお前に、実際命がけ状態のこちとらの選択をとやかく言われる筋合いねーよと。
これは伊藤詩織さんに対する初期のメディアにも感じたことですが。
きっと想像力ですよね。必要なのは。
戦争を知らない私たちが、戦争体験者の体験談を聞くときに必要なのは敬意と想像力でしょう。
ということで、アカデミー受賞のroom、きちんとそこを描いている秀作です。
そして、5歳の息子のジャックが、可愛すぎな上に何より演技がうますぎなことも言っておきたいです!
すごいリアル。
神に選ばれた才能?
とかほうほうと感心してましたら、ジャック役のジェイコブ•トレンブレイくんは、「ワンダー 君は太陽」のオギーやん!と知り、神子役と納得。
良かったですよ、とっても。
こっちは、roomの2年後なんで、2017年作品。
10歳の役でした。
(ジェイコブくんは2006年生まれらしいです)
5歳から2年で10歳役とはいきなりな感じだけど、違和感ないのは演技力ですね。
まあでもショービズ界や周りの大人に左右されず、映画のなかのジャックとオギーみたいにのびのび育っててほしいな(*´-`)