2015 begin again
キーラ・ナイトレイの歌を中心に、全編に音楽があふれている作品。
ネタバレあり。
ざっくりストーリーとしては、最初は一緒に作曲してたのに、彼氏だけ売れっ子ミュージシャンになって、さらに浮気され振られたグレタと、妻に不倫され、いろいろ壊れちゃって娘を置いて家を出ちゃったアル中で会社もクビになったプロデューサーのおっさんダンが出会い、ともに自分たちの音楽を作っていく、って話です。
ここが良かった「はじまりのうた」
音楽があるだけで平凡な景色が美しくなる
舞台はニューヨーク。
お互い人生のツラメな節目に立つグレタとダンおじさん。
ライブバーで全然客にウケてなかったグレタの歌をたまたま酔っ払いながら聞いたダンは
こ、こ、これだー!!
となり、一緒に音楽作ろうと持ちかけます。
グレタも最初は、なんやこのホームレスみたいな酔っ払いオッさんは?と感じつつも、まあじゃあやります〜と。
ダンは元自分の会社に売り込みに行くんですが、そもそも会社をクビになってるもんだから、スタジオが使えないんですね。
だもんだから、お金を一銭もかけずにデモを作るためのアイデアを思いつきます。
音楽を愛する売れないミュージシャン(の卵的な人)たちを集めて、ニューヨークのさまざまな場所の喧騒のなかで演奏and録音していくんです。
これがとにかく観る側をわくわくさせてくれるんです。
なんで、こんなわくわくするんだろう?と考えて、もちろんニューヨークのあちこちが登場するステキさもあるんですが
ずばり
私にもできるやん?
が詰まってるから。
場所は路上、メンバーは半素人、録音はMacBookにソフト入れて。
つまり今どきの自主制作のやり方を描いてるわけです。
だからやろうと思えば誰でもできる、それが楽しく描かれているのが、わくわく感の素なのではないかと。
まずこれがベース。
さらにです。
無愛想でまだプロになりきれない半人前なグレタと、純粋だけど故に商業主義になかなか合わせられないダンが段々と距離を縮めるなかで、決定的に心が通じあったシーンがあるんです。
それが、2人でそれぞれのお気に入りプレイリストを聴きながら夜のニューヨークを歩き回るシーンです。
スマホにイヤホンつないでプレイリストを聴かせ合うという。
まあなんてピュアな!
10代の頃にやってるやつですよ。
でもここはもう最高にステキな場面で、音楽とともに人生を過ごしている誰もが共感できると思います。
「恥ずかしいの入ってるよ」とか言って、高校生かよ、キュンキュンするー(●´ω`●)(とかいってる私が恥ずかしい(о´∀`о))
でニューヨークの道端に座ってシナトラを聴きながら、ダンがグレタにニコニコして
「こんななんでもない平凡な景色が、意味を持ち、美しくなる。ぴかぴかの真珠になるんだ。音楽があれば」
なんてことを言うもんだから、このホームレス風味なオヤジがもう、坂口健太郎さんを超えた、ブラピを超えた、超イケメンに見えてきました。
え!ななんか急にカッコいい人がいるー!?
お似合いの2人がいるー!
みたいなもう結ばれるしかないシーンです。
✳︎ただ…これについては後述。
あと、ダンの娘でお年頃ティーンエイジャーのバイオレットがギター上手いやんってシーンもカッコ良かったです。
つまりこの映画って、音楽そのものはもちろん音楽好きのすべての人へのオマージュというか、応援映画になってるなあということです。
マーク・ラファロという役者
ダンを演じるマーク・ラファロがめちゃいいです。
人生に傷ついて投げやりだけど、根はピュアな心を持つ、愛あふれる人で、ダメオヤジがグレタと出会って段々と変化していくという、なかなか繊細な人間を素晴らしく表現していて。
こういう年配の人物のピュアを描くとき、下手したら
何おやじが若い女に色気づいちゃってキンモ!
と下世話に見える難しさがあって、というか私がドラマや映画によく思うことなんですが(=´∀`)人(´∀`=)、ダンは全くそれとは違ってまして、どっちかというと正統派二枚目でもないし、シュッともしてないんですが、目元に知性がうっすら漂うからでしょうか。ステキな役者さんだなぁと思います。
「結ばれない」という自由
そうなんです。グレタとダンは恋愛としては結ばれません。
映画では2人が一瞬の見つめ合うシーンが幾度かあります。
それが、どういう意味があるのか。
いろいろ想像させるけど、それ以上2人とも何も語らないし、何も始まらないのです。
これが私はとても良いなと感じてて、オヤジのピュアを真性にしてるというか、ある意味では古典的なピュア。
やり尽くされたハリウッドにまだ、こんなピュアがあるんかい!
という驚きと同時に、人間同士の関係なんて、どんな呼び方したって、これは恋愛だとかこれは友情だとか、どれくらい好きだとか、不倫だとか裏切りだとか、周りがとやかく言うことじゃないし、そんな型にはめて割りきれるもんじゃない、名前のない愛情や結びつき方があるんだよ…という余韻が私は好きです。
ということで音楽は生きる糧になりうるものだし、その存在の不思議さ、「好き」の楽しさ、何ものにも縛られない自由さがあることを改めて気付かせてくれる作品でした。
おまけ
マーク・ラファロさんは「スポットライト」にも出ています。こちらもいいです。
アベンジャーズのハルク役でも知られています。
監督は「モダンラブ」のジョン・カーニー。
あいまいで多彩な人間の感情やつながりを巧みに描いているのは共通してます。ジョンカーニー監督の持ち味ですねー。
マルーン5のアダムレヴィーンがグレタの元カレ役を!通りでめちゃ歌上手いはず…