映画化されたシリーズ。ネタバレありです。
ネタバレしないで読む方か断然おもしろいです。
まず怖いというか、「ユリゴコロ」ってタイトルがもうなんだか薄気味悪いし、その薄気味悪い感覚をずっと維持しながら、最終的に親子の深い愛の物語に仕上げていくなんてやっぱりあなどれない作家さんです。
ミステリは好きだけど、ホラー小説は苦手なので、夜更かしして読みながら、トイレに行くのが怖くなってトイレ我慢して、でも辞められずずっと読む、みたいな感じで1日で読み終えました。
薄っぺらにまとめると、人が死ぬ姿に「ユリゴコロ」を感じて満たされるサイコパス母ちゃんが、父ちゃんとの出会いと家族を得ることによってユリゴコロなしで満たされてサイコパス卒業かと思いきや、過去の殺人に足を救われ破滅し、たかと思いきや実は。
ハッピーエンドなので読後感は薄気味悪さも払拭され、良かった〜(*^o^*)と終われます。
でも、このギャップ。
サイコパスも人の子。
サイコパスは真の愛で変わる。
みたいなことを言いたいわけではないとは思うんです。
じゃあ何が言いたいんだと考えても、私には分からないんですね。テーマみたいなものが。
貞子シリーズが恐怖をテーマにしているように(リング読んだ時ほんと怖かった…)
作品の薄気味悪さと思いがけない展開のそれ自体が大事なんかなぁと。
たとえば芥川龍之介のくもの糸とか、宮沢賢治の注文の多い料理店とか江戸川乱歩の人間椅子とか、横溝正史の金田一シリーズとか、そういう薄気味悪さが魅力というか、ダークファンタジーと言うには、ファンタジーさが足りないかもですが、新しい形、現代的なホラー小説なんかなと。
ホラーでもないな。この小説は何だというのがわかりません。
最初はなんだコイツこえーってサイコパス母ちゃんの辛い状況に同情や共感が湧き出てきて、最後は幸せになって!と感じるのは、本当に不思議です。
最初の方のサイコパス母ちゃんの子供の頃の話で、井戸に虫を落とす場面や人形を逆さまにしてミルクのます場面とか、めっちゃ薄気味悪いです。
だけど大学生あたりの化粧が濃ゆいミツコちゃんが出てきたあたりから、ちょっとなんていうか、歪んだ青春小説みたいなノリが出てきて、そこはかとなくユーモアさえ感じながら、「ラーメン」が出てきたあたりは、もはや自分がサイコパス側で共感してるんですよね。
ああフシギ。
そこに輪をかけて不幸が重なる母ちゃんが、父ちゃんと運命的に出会い、「普通の幸せ」みたいなものに満たされて良かった〜とはならずなのは読めるとして、物語の狂言者であるサイコパス母ちゃんの息子の亮介の恋愛話や仕事場の人間模様が絡んで、物語は思わぬ方向に。
あえてちょっとだけ不満をいうとすれば、この亮介があんまり自分で動かないというか、単純すぎるというか、面白みがないというか、周りのクセが強過ぎて、主人公的位置だけどなんとなく影が薄いところでしょうか。
もう少し、母の存在に苦悩しながら成長していくみたいな様を見たかったような。
あと基本的にみんな優しいです。
だから結局母ちゃんはサイコパスになりきれなかったのかもしれません。
というわけで気味悪さと優しさと、なんやかや人間ってしぶといよね!とが胸に迫るおもしろい物語でした。