お探し物は図書館まで
青山美智子 2020
本屋大賞2位 という帯につられて読みました。
市のコミュニティハウス内にある図書館を舞台にした群像劇の短編集で、それぞれ年齢も性別も違う主人公たちが図書館の司書の小町さゆりさんに何げなく紹介された本をヒントに人生を変えていきます。
最初は、そこまで何にも感じなくて、むしろ「タイトルいただけないよなあ」とかぼんやり思ってしまうくらいに、まあまあまあ…な感じだったんですが。
最後の物語が、どっひゃーええもん読んだがな!
と涙目になるくらい良かったです。
上手く言えないんですが、青山美智子さん、素晴らしかったです。
確かに文学作品としても素晴らしい、が同時に「本」への愛情が詰まっているから、あーだから本屋大賞、獲るよね、獲るわ、と。
本屋さんで働く人も出てくるし。
あと司書の小町さゆりさんのキャラ立ちの良さ。映画化された想定で、脳内で当てはまる女優が想像できず。…私的にはマツコちゃん?
でもって短編のそれぞれにつながりを持たせる伏線が上手く散りばめられていて、最後の物語がこの伏線を絶妙に回収しているし、この最後の物語に登場する「げんげと蛙」という草野心平さんの詩集の語り口がめちゃくちゃ良くてですね。
草野心平さんの「げんげと蛙」は昔、教科書で読んだことあるなあ〜くらいの認識しかないんですが。ケルルン、クックという印象的なワード。
こんな深いものなんだと。
青山美智子さんの草野心平作品への愛情がものすごく伝わるのが嬉しかったです。
で、この物語で短編ごとに実在の本を紹介しているんですが、どれも読んでみたくなるんですよ。
ダーウィンのやつとか。めっちゃ読みたい!となり。
でポチろうとして7000円なのにびびって、諦めたんですが(΄◉◞౪◟◉`)
青山美智子さんのすごいとこは、まさにコレ。この自分の本だけでなく、連鎖的に、登場する本を読ませたくさせているところです。
本というのは人それぞれに解釈があって読み込み方がある、という当たり前のことにも改めて気づかせてもらえたし、読書って見方をかえれば、何にもしてないわけですよね。
文字を読んだだけで。
何か自分の人生における意味ある行動をして変化をもたらした訳じゃない。
でもです。
でも、人は読書で救われるんです。
そのことを改めて、いや再度、自覚させられました。
だからこの作品は、もう「本」自体への、その存在への、畏敬の念というか。
まさに青山美智子さんの溢れる本への愛情が、読み手の私にもシンクロしてきました。
なんだこの心の揺らぎは!
まあそんな素晴らしい作品なんですが、最後の「正雄 65歳 定年退職」が急激にかなり胸を打ったもんだから、頭がまだ整理しきれてないながら、感動を記録しておきます。
最後の3ページくらいなんて、脳内に電気走りました。
私は最近、仕事で上手くいってなくて、もう歳も歳だし、いろんなやる気がペシャンコになった風船みたいにしぼんでます。
ギックリ腰してから治らない腰痛もあるし。
そういう時に自分に何が必要かって本を読むことだなぁと。
あと、睡眠。あと考えるための静かな時間。
それはきっと私だけじゃないんだな。
青山美智子さんもだし、多くの人が物語や記録や詩をこれからもずっと必要としていて、何にも諦める必要なんかなくて、そこに静かにあるものに光を当ててくれて、小さなものたちを輝かせる。
何にもしたくない、うずくまっていたい
腰も痛いし
でも
もっと読もう、出会いたい、知りたい
とも思ってしまう。
そんなふんわりした雲のような明日への期待がむっくり湧いてくる秋の読書です。