見る前に思っていたのを、いい意味でめちゃくちゃ裏切ったのが「タクシー運転手」。
最初、パッケージビジュアルから、寅さんチックなのほほんロードムービーをイメージしていたんですが、ぜんっぜん違いました…
いやでも前半は割と明るくポップな気分で見ていました。
人情味溢れる、てか人情味以外なんも持っていない一人娘育てているタクシー運転手のおじさんのドタバタみたいな。
でもですね、時は1980年5月の場所は韓国。
知らなかったんですが、軍事政権の厳しい戒厳令下で、デモと軍の衝突が起こってたんですね。
メディアは軍事政権にびびってプロパガンダで事実報道もできません。
そこに外国人記者が真実を世界に知らしめようと潜入するんですが、この思惑を知らずにお金目当てだけで、外国人記者を助ける事になったのがタクシー運転手のおじさんです。
結局、軍がデモ隊の民間人を撃ちまくるとか、戦時中の日本の憲兵みたいな私服軍人が殴るわ蹴るわの暴行して学生さん殺したりとか、半端ないことが起こって、それをまあカメラに収めていくんですが、タクシー運転手のおじさんは、韓国は住みやすいいい国でまさかそんな事が起こるとは思ってないから、こらえらいこっちゃと。
泣きました。
この外国人記者さんはユルゲン・ヒンツペーターさんという実在の方で、タクシー運転手さんも実在の方。
物語も実際にあった事実ベースらしいです。
そして韓国の歴史、特にこの1980年から後のことも知りたくなりました。
で、軽くググってダイジェストに読めるものがさっとは見つからなかったんですが、
これ見る限りでは1980年代の韓国は学生から始まった民主化運動がすごい勢いで広がっていった時代だったようです。
そうだったのか…全然知らなかった…
1990年代後半、私は大学生の時に韓国に行ってるんですが、おそらくまだその空気感の名残もあっただろうのに、なんも知らんまま行って帰ってきたな…
若き日のぼんくら頭が悔やまれます。
ということで、タクシー運転手は時代も分かるし、作り手の本気を感じるかなり名作です。
そして清々しいくらいにイケメン、美女が出てこない(ユンゲル役のトーマスクレッチマンさんはまあイケメンか)のがまた素敵で、各位のしぶい名演あふれています。
タクシー運転手のソンガンホさん、いいですね。
隣にいるおっちゃん感。