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「生きていれば人は滅びない」という、そらそーだ!な希望

「熱源」川越宗一 文藝春秋

 

【第162回 直木賞受賞作】熱源

【第162回 直木賞受賞作】熱源

 

 

日本語では樺太、ロシア語ではサハリン。

物語の背景をざっと書いてしまうと、明治時代、日本政府により、主人公の少年ヤヨマネクフや友達シシラトカ、太郎治たちアイヌ人が樺太から北海道に移住させられた後の話です。1880年代から1945年までの出来事です。

えっとだから、、誰のものでもなかった樺太がロシアと日本で取り合いになり、日露戦争日中戦争ロシア革命第一次世界大戦第二次世界大戦っていう、まさにドロドロの戦争の時代を駆け抜けたアイヌ樺太をめぐる物語です。

ヤヨマネクフが少年だった頃からじいさんになり死ぬまでですね。

 

では、「熱源」の読みどころを見つけていきたいと思います。ネタバレあり。

 

100余年前への驚き

アイヌのことを私は恥ずかしながら、これまでよくしりませんでした。文化は違っても言葉や人種が違うとは思っていなくて。特色強めの方言や地方の人くらいの違いと思っていました。゚(゚´Д`゚)゚。

言葉、全く違うんですね。ヤヨマネクフたちは、アイヌ語に加え、日本語、ロシア語を解します。めっちゃインターナショナルです。

でも当時、アイヌ人たちは日本人から土人と呼ばれ、未開地の野蛮人と思われているんですね。それもびっくり驚きました。だって他民族に向かって「愚かで野蛮な人種」と平気でのたまう神経とか、今だったらどんだけ間違いだらけで無知で傲慢でお前こそ愚かな差別主義者だよ、って話ですから。

 

この100余年。それこそ残酷で野蛮で愚かな間違いを繰り返しながら、科学的にも社会学的にも史学的にも発展しながら、人間社会の価値観の目まぐるしい変化が起きてきたんですね。

 

まずそこの驚きたるや。

 

ブロニスワフの壮絶な半生

その驚きが止まないままに、第二の主人公、ブロニスワフ・ピウスツキが登場するあたりから、興奮のるつぼに飲み込まれていきます。

ブロニシ(ブロニスワフのニックネーム)のまあ壮絶な半生たるや。

大学生だったブロニシは、帝政ロシアへの謀反を企てたという濡れ衣で全爪剥がされて、元の顔も分からなくなるようなギッタンギッタンの拷問を受け、サハリンに強制送還され、囚人として10年に渡り極寒の地で非人間の扱いと強制労働の日々を過ごします。

ブロニシはそのなかでニクブンという少数民族と仲良くなり、民族学研究者としての道を切り開いていくんですが、この話だけで、なんちゅー人生かとページをめくる手が止まらなくなりました。

 

なんかもう全部が怒涛。なんやかやでブロニシは北海道からサハリンに戻ったヤヨマネクフやその仲間たちアイヌ人社会に入り込み、妻と子を持つんですが、ほんとブロニシが平穏な日々迎えられて良かった良かったと。

 

でもまあ最後までドラマチックな人ですよ。ブロニシは。ブロニシの物語はだんだんとロシア革命ポーランド独立に絡んでいくんですが、そのあたりも歴史的に知らないことが多くて、ほわわー!と面白かったです。

 

アイヌ、ロシア、日本。全部の視点を絡ませる巧みさ

この本のすごさのひとつとして外せないのは、日本やロシアに挟まれて時代の波に翻弄されたアイヌだけでなく、ロシア、日本の視点を巧みに絡ませ、複眼的に読めることです。

 

ロシアと言っても単純にロシア人やロシア革命を描くんじゃなくて、ロシアから母国語使用を禁止されたポーランド出身のブロニスワフ・ピウスツキに物語を引っ張らせるあたりの妙技。

 

さらに迫害される苦しみを描く上で、ニクブンやオッコロというアイヌ以外の少数民族も登場させ、樺太が、誰のものでもない多民族地域だったことの意味を考えさせてくれます。

 

 

「生きて」受け継いでいく

涙が出た場面があります。ページ数でいうと370ページから400ページにかけてです。

 

先に挙げたように、価値観が今とは全然違う100年前の話です。

若者が賭してお国のために戦うことが賛美される時代なわけです。そこかしこに日本のそんなナショナリズムな価値観やら、西洋の己れが最優先な帝国主義な価値観が、登場人物たちの言動に散りばめられています。

まずここを理解した上で。

ヤヨマネクフがアイヌの新しい故郷を作るために命を捨てようとするのを、幼なじみのシシラトカが止めようとして、こんな言葉を投げかけます。

 

「誰かが死なないといけないようなところで、誰がいきていけるんだ?」

 

ああ、これが答えだと。

私たちが、生きる意味。死んではいけない意味。

国のために、民族のために、屍を乗り越えるような手段はとってはいけない解です。

 

先の戦争でもそうです。強大な国家権力が暴力的に国民を統制していた過酷な時代を「生きようとしてくれた」から今がある。私たちは存在する。命が未来に受け継がれる。

 

ただそれだけなんだと。もし私の家族や友人が、大切なものを守るために命をかけたいと言うことがあったら、大切なものを守るために生きてくださいと言いたいです。言える方にいたい。言える世の中でいてほしい。言える自由がずっと未来にもあってほしい。

 

シシラトカはちょいチャラ男キャラなんで、まさかそんな時代にそんな未来的な発言をするとは思っていず、そこからの展開に泣きました。

 

ポーランド独立に武力を用いることに最後まで反対したブロニシも同じなんですよね。誰かの命をかける事で、故郷を守れると思わないと。

 

日本がロシアに戦勝したころ、大国に勝利したイケイケな日本になぞらえて、滅びゆく民族と言われたくなければアイヌが強くなればいい的なことを、かの大隈伯爵に諭されたブロニシ。弱肉強食の人の摂理を問われてブロニシは答えます。

 

「そのような摂理とこそ人として戦います。人には終わりも滅びもない」

 

のちに同じ質問をされて、ヤヨマネクフも答えます。

 

「俺たちは、どんな世界でも適応して生きていく。俺たちはアイヌですから」

アイヌって言葉は、人って意味なんですよ」

 

全然関係ないけどそういえば、先日あさイチヤマザキマリさんも言ってました。

「大気圏外からすれば、みんな一緒だよね」と。

 

そっか。生きることに国も民族も区別はないし、生きようとすれば人は滅びない。それこそが本当の人の摂理なんだと思いました。世界は広いんだと、子供たちに可能性を伝えられる世界であってほしいなとつくづく感じます。

 

歴史的な著名人も多数登場

「熱源」はフィクションの体で書かれていますが、史実に基づいたストーリーです。上述の大隈伯爵もだし、他にも、おー?えー?って歴史上の人が出てくる楽しさもあります。あの時代は、てんこもりだなと。

さて何人見つけられるかな?

あ、あとアイヌの名前ってユニーク!

チコビロー、バフンケ、イペカラ…意味は分からないですがロシア人名よりゴロが良く覚えやすいです。

 

良かったまとめ

ヤヨマネクフとブロニスワフ・ピウスツキという、日本、ロシアそれぞれに翻弄、迫害されながらも、アイヌポーランドという自分のルーツを求めて過酷で激しい時代を生き抜いた2人。

激動の時代を生きた人々を力強く広い視野で描いた、素晴らしい一冊でした。戦争は悲しい、2度とあかんなと改めて思いました。

 

未知だったアイヌのことを知れたし、俄然北海道行きたくなったなー^_^

美味しいもの食べたいなー(´∀`*)