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子育てと正社員の仕事の両立にぎりぎりな40代の母ブログ

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「聖なるズー」対等性と愛とセクシャリティ

聖なるズー (集英社学芸単行本)


「聖なるズー」濱野ちひろ

2019 集英社

 

いやあ面白かった!

ドイツの動物性愛者の団体に密着取材したノンフィクション。

好きなブロガーさんがおすすめしていたんですが、読む前は、ドキドキしてました。正直、え!動物と?それってスーパーバタードック…という哀しき無知からの嫌悪感も否めず。

 

でも!全く逆だった!このギャップ。

すごい衝撃と感銘です。

 

セックスとは何かとか、深掘りして考えたこともない私はまず、そこに真っ直ぐ向き合おうとする著者にある種の学者魂をかんじました。まあ実際大学の研究なんですけどね。

でセックスとは、親密なスキンシップの一つであり、すごくパーソナルであり、生きるものの普遍の営みであり、法律や宗教の介在が長く続く禁忌なものであり、そして同時に、商品にも、さらには支配の手段、暴力の形にもなってしまうもの。なんかもう難しいし、私にはなかなか手に負えない代物です。

 

そこに果敢に挑んでいるのが著者の濱野さん。

言葉を持たない動物と暴力ではない対等なセックスは可能なのか?

動物と合意しているとどうやって分かるのか?

 

著者は、支配欲を満たすための動物への暴力やレイプがあること、世間にはおぞましいイメージや偏見があることも踏まえて、真実を求めて単身ドイツに向かいます。

 

ドイツでは、ゼータという啓蒙団体のメンバーである「ズー」と呼ばれる動物性愛者へ取材をします。そして、ズーたち動物性愛者が動物とのセックスを目的としているのではなく、動物との対等な関係の先にスキンシップとしてのセックスがあるという事実を知ります。私も読みながらズーの考え方や暮らし方に衝撃を受けました。

 

もちろん、動物の真の気持ちなんて地球トップクラスの謎ですから、その真実の答えを著者が発見したわけではありません。

 

ただズーである彼彼女らは、動物との対等な関係を築くことに強い目的意識と葛藤があります。そして動物と言葉でのコミュニケーションがないのを受け止めた上で、"動物側"に寄り添って生きているのです。利他的なくらいに。

 

ズーの暮らしはペットを飼うという感覚よりも、もっと"動物側"です。動物の習性や日常に、人間の方が近づいている感じ。そういう意味では弱い動物を庇護しようという動物愛護精神よりも、より動物と対等な関係を築いています。何よりズーと暮らす動物たちはいきいきしていると著者は語ります。

 

読みながら私の頭に浮かんだのはジブリ作品に出てくるナウシカとサン(もののけ姫)です。

ナウシカは、虫にあまりに肩入れして周りから心配されるし、サンは狼に育てられて当初は人間を完全に敵視していました。ズーは、そのどっちかっていうと人間側より動物側な感覚に近いというか。人間と動物の隔たりが極めて薄まっているのがズーなのかなと。ちなみにこの2つのジブリ作品が問いかけるのは、自然(動物)と人間の共生です。そしてズーが誤解と差別をされている自分たちへの啓蒙とともに社会に求めているのも、まさに動物や自然との共生という部分です。

 

本書では、日本のアニメや、万物に神が宿ると考えるという古来の日本人の価値観にも触れています。だから、ズーはナウシカもののけ姫っぽい人たち、と捉えるのもそう遠からずな気もします。

 

ただし。著者が探しているのは、「セックス」というリアルな生の在り方。著者の探究は、自分が受けた過酷なドメスティックバイオレンス経験が始まりです。愛ってなんだ?より前にセックスと暴力の違いをちゃんと考えないと!ってところの探究です。

その探究心が異種間パートナーシップ、セックスおよび他者との対等性、無視されてきた動物の性という問題につながっていきます。そんできっと著者は、ズーに真実を求め、少し救われたんじゃないかと。

 

他者との対等な関係の在り方を固定観念や社会規範を脱ぎ捨てて、広い視野で考えてみることは、決してマイナスにはならないと思います。むしろ私は、動物性愛も、対等性も、自分がいかにこれまで狭い枠でしか捉えてなかったか気づかされました。

 

私たちは当たり前に人間同士は対等だと理屈で理解しているけれど、ほんとかな?種族だけでなく、今自分は身近な人たちとも対等なのか?

対等なパートナーシップって何さ。

答えは簡単には出ないけれど。

本書には、天性の、根っからの動物側なズーだけでなく、彼らの考えに共感と感銘を受けてズーになった人も出てきます。自らの意思で。

 

パートナーとの関係、結婚、恋愛、自分のセクシャリティに悩む人はもちろん、他者との良き関係性を模索しているみんなに。この本はたくさんのヒントをくれるのでは。

 

追記

この本では書かれてなかったですが、私が一つ気になったのは、そもそもの動物の特性です。犬社会はかなりの縦社会と聞いたことがあります。たとえば家犬がエサをくれる人をトップにすえて上下のヒエラルキーを持って関係性を築くという話を聞いたことがあります。犬との強い結びつきは理解できても、その関係が果たして人間と同じ意味の“対等”なのかな??

 

私自身は金魚と鈴虫とすぐ逃げたインコ以外の動物と暮らした経験がないから、その絆みたいな部分が正直実感としては、よく分からないです。動物と長く暮らした経験がある人は、動物とのパートナーシップの築き方を理解しているはずなんで、より理解できるかも。動物とあまり接点なく生きてきた私ですが、でもこの本はとても良かったです。