「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」ブレイディみかこ
✳︎おすすめ度高く、最近の読書リスト - tsubatarouのブログから独立させました。
イギリスで子育てするお母さんのエッセイ!
日本じゃ絶対味わわない多様性がもたらすさまざまな出来事に日本人の母、アイルランド人の父の血をひくミックスな中学生男子(とはいえイギリスの中学1年は日本の小学5年くらいにあたります)の体当たりの日々を、母の視点から語ります。
この息子がまたいい奴で。柔らかく、しなやか。
お母さんがそもそも柔らかくてしなやかで、息子くんが、実際に学校や近所で人種差別されたり、友達同士での経済格差を目の当たりにするなかで、差別の本質、貧困の現実について、自分で考えるためのヒントを、ちょっとした対話や出会いの中に示唆して、息子の成長を応援します( ^ω^ )
日本では味わわない、て書いたけど、実は日本でもみんな味わってると私は感じています。
もちろんイギリスみたいに人種や国籍や宗教が違うことは多くはないけど、出身地や学歴や親の経済力や家庭環境や職業や外見や性別や個性そのものに対する差別や格差は誰しも体験したり見聞きしたことあるはず。
たとえ自分が差別される側でなくても、素通りしていることの中にも。
イギリスが良いなぁと思うのは、多様性がもたらす複雑さを単純化したり、ないものとせず、その複雑な社会を生き抜く力を身につけさせるための教育カリキュラムを充実させている点です。
Black lives matter の運動に見られるように、ほんとに混沌とした今。社会の一員として子供の頃から多様な人同士が助け合う必要性を学ぶって大切!
数学や国語みたいな、いわゆる覚えたり理解したり、効率よく計算したりする基礎知識、基礎学力だけでなく、例えば、他者に対する想像力を身につけるための「考えるチカラ」「表現するチカラ」をつけるカリキュラムを普通に組み込んでいて、それが成績に関わってくるようなシステムになっているようです。こーゆー評価を取り入れたら、受験にしても「学力」「能力」そのものの価値が全然違うものになりそうです。
また、多様性多様性って、世の中が入り組んで絡まった糸のようにもみえますが、自分を取り巻く社会に照らし合わせれば、差別ってするのとされるのは実は表裏一体というか、乖離していないよね、ということなんだろなぁとこの本を読んで改めて感じました。差別される一方で、そんな自分が無知故に別の誰かを傷つけることもあるから。
お母さんであるみかこさんが、息子くんと同じ学校に通うアフリカ系の子のお母さんとのコミュニケーションに失敗して怒らせてしまう話なんかは、何か痛いほどわかるというか。会話のすれ違いや気軽な一言が大きな溝を生む怖さ、私も体験したことあるなぁと。じゃ、人を傷つけたり無知を晒さないために、対話やコミュニケーションは避けた方がいいのか?ではなくて。たとえその場で失敗しても、その対話があったから本音を知れたわけで、他者理解には限界がある事実も含めて知っていかないといけないわけで。じゃないと黙っていても何にも変わらないわけで。己の失敗や無知に気づくことは、優しい世の中に向かうはじめの一歩なんだなとも思うのです。