親になった今こそ半端なく泣ける。
それが砂の器。
名作です。
野村芳太郎という監督
また時代背景
役者
いろんなもんが上手く調和しています。
しかし何よりこの映画を佳作にしている理由は、
原作に根を下ろす、
差別という抗えない宿命に飲み込まれながら、
壮大な音楽に昇華された父子の愛の、
有無を言わさない圧倒的な存在感です。
海辺を歩く父子のシーン見ただけで、嗚咽。
こんな名作をプライムビデオで無料で見れるなんてラッキーです😊
「砂の器」ここがいい
①前半の刑事ドラマと、全く違う展開を見せる怒涛のクライマックス。
なんせ中盤までと後半のコントラストがすごいです。
今だったら、こんかつくり方しないよね。
一見、尺の取り方間違えたようにも思える、前後の流れと内容の違い。
中盤までは、ほんと刑事推理モノ。淡々と進みます。ちょい中だるみするくらい。
それが、クライマックスで事件の真相解明となるんですが、これが急展開。すごい落差。もはや小気味いいです。
②外さないキャスティング
主演 丹波哲郎
若かりし頃の丹波哲郎が主役の刑事なんだけれども、普通にかっこいい。まあすでにおじさんなんだけど、70年代くらいのものごしとか日本語ってきれいですよね。
品があるのは原作が小説だからかもしれませんが、丹波哲郎が知的でシブい。また森田健作も若い刑事役が似合うし、今でも通用しそう。
そして裏主役とも言うべき和賀栄良(わが えいりょう)役に彫りの深い加藤剛さん、父ちゃん千代吉が加藤嘉さん。うまいなあ。
脚本には山田洋次監督も参加しているようです〜
砂の器は映画版、ドラマ版合わせて4回映像化されているそうです。うろ覚えながら、ドラマ版で有名ピアニストかつ犯人 和賀栄良を演じた田村正和さんが超イケメンだった印象が実は強くて。加藤剛さんよりやっぱ田村正和バージョンが好きかも(*´∀`*)
いずれにしろ、この栄良のキャスティングが大きな肝であることは間違いなく!2000年代以降には、中居くんや中島健人さんも和賀栄良役されています。
③哀しくも美しい映像に、壮大な音楽を被せる演出
6歳の男児がハンセン氏病の父と波しぶき立つ日本海沿岸で放浪を続ける、ってもうそれだけで胸いっぱい。
悪ガキに石を投げられる父子。お巡りさんに追っぱわれる父子、雪吹雪の中、戯れる笑顔の父子。砂浜を歩く父子。
2人でいる暖かさと哀しさ。守るべきものがあるって幸せなことなのか。
そこに栄良コンサートで演奏される"宿命"が被さって…泣くしかない。
④父子の絆が強いからこそ際立つ人間の弱さ
愚かな偏見差別は昔のこと、であってほしい。
こんなに哀しく深い愛ある父子の姿を、松本清張は何故、描いたのか。
深い絆を感じさせるほどに際立つ、背負わされた差別という宿命の過酷さ。
普通の人間の、善良な人々の無知と誤解による蔑み、嫌悪、恐怖。
それこそが何より哀しくて、今も私自身が背負っているものです。
私たちは、いつだって自分は多数側にいて、自分たちが善良だと思っています。そして自分がマイノリティになってしまうことを恐れています。
ホロコーストを行ったナチスはじめ歴史を辿ってみれば、差別は、善良な多数側の人間が恐怖や支配のなかで保身のために繰り返し生み出してきたもので、それは過去のものではなく、今なお人間の弱さにつけ込む隙を狙っています。
歴史の教科書の話じゃない、今ここにある油断ならない存在です。
それに打ち勝つには…まず知ること。確かめること。
さまざまな角度から正しい情報をたくさん持つこと。
⑤戦後ミステリ小説全盛時代に君臨した松本清張が原作
これはもう周知の事実ですが、巨匠です。
父の本棚にあった「点と線」。列車ダイヤを使ったアリバイ工作が難しくてなんだか堅苦しく感じて、赤川次郎の方がおもしろーいと清張作品から遠ざかった思春期の始まり頃。
砂の器も前半はずっとこの「点と線」的刑事推理モノが続きます。
父の本棚には清張がたくさんあったけれど、それ以降はほとんど手をつけないまま月日は流れて、武井咲ちゃん版ドラマ「黒革の手帳」で再会しました。これがまあ面白かったです!
清張の面白さを知らずにきちゃった45年。
なんせ、砂の器は1960年に読売新聞で連載されていた、60年も前の小説です。
松本清張御大は、基本的に戦後、推理小説が発展した時代の走りみたいな存在ですよね。知らんけど。
礎?
けど、この作家さんは、山崎豊子的で、社会や時代をしっかり描いています。
昔の小説やドラマ、映画は、今よりもっと社会をしっかり描くことへの使命感があったように思えます。
社会への忌憚ない姿勢と視点を、いかに緻密にエンタメと物語に絡ませるか。知的作業ぶりに感嘆します。。
と言いつつ、清張作品読んでない。
60歳過ぎて定年した頃に読もうかな。
⑥70年代の街並みや風俗
70年代の映画は一つのトピックとして興味があります。私が生まれた70年代。こんなんだったんだなあ、おもしろいなあと、まあ飽きない。
都会の建物も今と全然違うし、田舎の風景見てたら、もうこんなんないんかなーとか。
砂の器の前半は、主役刑事である丹波哲郎が、捜査として東北、中国、関西を旅するんですが、たくさんの当時の風景が見れる、一種の記録映像としても価値あります。
だから中だるみも飽きずに見れたのかも。
というわけで、久しぶりに映画を見て涙が溢れたので記録しときます。
ただ一つ弊害は、砂の器がすごすぎて、ほかの物語がつまらなくなることです
…いつもこのパターンやな…