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子育てと正社員の両立にぎりぎりな40代の母(映画・読書・日々のこと)

子育てしながら正社員として仕事しています。40代の母のブログです。コピーライター、読書、映画、プライムビデオ。育児の悩みや仕事の悩み、広告、マーケティング、家族のこと、ふと思うことを綴ります。

最近の読書「アーモンド」 2020年本屋大賞1位 うっすらネタバレあり

 

 

「アーモンド」 ソンウォンピョン

アーモンド

アーモンドに似た形の脳の部位を扁桃体というそうで、そこが人より小さいと喜怒哀楽などの感情を持ちにくい、そんな障害があるそう。

この扁桃体が小さいっぽい主人公の少年(高校生ぽいが韓国は数え年を利用するのが一般的らしく実年齢は2歳くらい下ぽい)が、養護施設などで愛情が薄めの環境で育った同い年の問題児少年と出会って、だんだんと人の気持ちを身をもって知っていくストーリー。

っていうのがざっとしたあらすじですが、少年同士が出会うまでの前半は、正直ちょいだるかったです。後半からはぐいぐいきて、めっちゃ良かったんですが。

 

前半は、貧しいながらもお母さんとおばあちゃんに愛情いっぱいに育てられた話が中心。お母さんによる普通の子に"見える"教育を受けてきたりや、暮らしのさまざまなエピソードのあたり。

それがね。今ひとつノレない。

ひとつには、いつも感じる韓国と日本のコミュニケーションの違い。素晴らしかった「82年生まれ キムジヨン」やアカデミー作品「パラサイト 半地下の家族」でもそれは感じていて、なんで私は韓国カルチャーにいつもちょっぴりノレないのか?自分でも分からなかったんですが、ふと今思ったのは、私はおそらく実際の異文化度以上に韓国と日本を近しく重ねて考えてしまってるのかもしれないなと。

私がノレない部分って愛情表現や会話のやりとりや質問、受け答えの仕方なんですね。同じことはアメリカ映画でも感じるけど、アメリカの場合は異文化で当たり前、てかそれこそが魅力であって「感情豊かで大袈裟でブラックジョークで底抜けに明るいわっはっはっ!」なコミュニケーションな訳です(あくまでもバックトゥーザヒューチャーやスポンジボブ的なメジャーでザッパな印象ね)。だけど韓国は同じアジア人の顔で、同じ白いごはん食べて、焼肉みんな好きで、キムチも冷蔵庫に常備していて、経済規模や受験戦争とかも似ていて、似た感じにアメリカナイズもされていて、言葉も似ている部分が少しあるし、訪れて生で見たこともある。なのに、実のところ日本と違う。それが理解しがたさになっちゃってるのかなぁと。

そう、多分。なんとなく。半島と島の違いからか、韓国の方が日本よりストレートで大仰な気がします。同じシチュエーションでも、慣用句や言葉の選び方も違うんだろうな。で儒教の影響からか年配の方の価値観は日本に近いながらも、より保守的というか家族とか血とかを大事にしてるようにも感じます。

韓国カルチャーって一体なんなんだー!と最近特に思う次第。近くて遠い、実に奥が深い。

 

さらにね、私的にはお母さんの人物像、前半と後半で少し違和感がありました。前半は、弱々しいというか、保守的な感じで、そんなにいい人には思えなかったんです。社会から我が子がはじき出されないようにというのは親として理解はできるし、子供を傷つけたくない守りたい正直な気持ちでもあるのだけれども、一方でお母さんががむしゃらに頑張る「普通の子に見える教育」に主人公がついていけてない描写があって、子供の頃から少しハミだしっ子の自覚があった私には、普通の子ってなんやねん!どんな子でも受け入れたれよ!ていう反発もあり。

分かるけど、お母さんのやり方は正しいのか?毒親にも通じるようなダブルスタンダードを読者に自覚させるキャラぽく受け止めていたんですが、後半に主人公が思い出すお母さんは、自分のこだわりで徹底して選書して古本屋を切り盛りする、知的で自由でダイナミックなキャラなんです。そのたくましさが、前半のお母さんと同一人物としてなかなか結びつかなくて。私の読解力が弱いだけなのかもしれませんが…

 

とまあ、端々にゆるい違和感はあるのですが、けれどもそれに勝る題材、テーマ、展開に溢れていて面白かったことには間違いありません。

 

特に主人公が初めて家族以外の他者、問題児とコミュニケーションを重ねていく描写はユーモアもあり、好きです。無表情の主人公と、怒りと暴力に満ちた問題児が、互いの"はみ出しぶり"をきっかけに、距離が近づいて行って打ち解けていくさまは、とても微笑ましいし、魅力的な関係性です。

この問題児くんが実によくて。作者はほんとはこっちを主に描きたかったんじゃないか?と思うくらい。彼は主に怒りと寂しさの2つの感情に突き動かされていて周囲からはウザい存在なんですが、複雑な人間の感情が分からない主人公には、彼はシンプルで分かりやすくて難しくない存在なんですね。

その結びつきが自然で。「普通」である私たちの方が実は彼らみたいな裏表のない人との関係を持てていないんじゃないかという問題提起にも感じました。

 

また主人公が、人を理解したい、と心を揺らめかせていくあたりも上手いなあと思ったし、終盤の問題児を助けにいくと決めたあたりの言葉もグッときて涙目になりました。

ハッピーエンドなのも読後によい余韻を残してくれます。

デビュー作である本書の次に書いたらしい「三十の反撃」も、ぜひぜひ読みたいなぁ!

韓国カルチャーももっと知りたい😊